2013 Fiscal Year Research-status Report
経済学説史におけるフェミニズムの理論領域の可能性についての研究
Project/Area Number |
25380254
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
舩木 恵子 武蔵大学, 総合研究所, 研究員 (00409369)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 経済思想 / 経済理論 / フェミニズム / H.マーティーノウ / 古典派経済学 |
Research Abstract |
本研究課題の主旨である「経済学説史におけるフェミニズムの理論領域の可能性」の導入的研究として平成25年度は、5月にミル研究会(大阪学院大学)において、「J.S.ミルの賃金基金説とフェミニズム」、7月25日からイギリス、オックスフォードで開催されたマーティーノゥ・ソサエティ・コンファランスで"Harriet Martineau and the idea of New Science"を報告するなど、国内外において、古典派経済学の理論とその思想的背景について文献分析と研究発表をおこなった。 本課題においてH.マーティーノゥについては、フェミニズムやユニテリアニズムなどの思想研究を経済理論と関係づけるため、経済学の分野以外にも対象領域が及び、学際的な協力が必要となった。今回マーティーノゥ・ソサエティのメンバーと積極的に意見交換をおこない、文学、ジェンダー、教育学、哲学など経済学以外の分野の専門家と交流できたことは意義があった。 9月フランスのリヨンで開催されたリカード国際会議では、マーティーノゥ研究に対する多くの示唆を得た。この9月の渡仏の成果によって、平成14年3月28日のリカードゥ国際会議において、"Harriet Martineau's Illustrations of Political Economy"を報告することができた。 今年度の出版業績は『マルサス・ミル・マーシャル―人間と富との経済思想』(柳田・近藤・諸泉編、昭和堂2013.11)所収「J.S.ミルの賃金基金説とフェミニズム」(第3章)と「ハリエット・マーティーノゥの『経済学例解』」(武蔵大学総合研究所紀要No.22,2013.6月)、英文論文は、マーティーノゥ・ソサエティのニューズレターに報告の主旨をまとめた'Harriet Martineau and the idea of New Sciene'がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H.マーティーノウの経済学研究は日本においてはまだ不十分である。しかし当事国の英国においても不十分であることが理解できた。つまり、文学や教育学、歴史関係の研究者を中心に、ユニテリアニズムとの関係を含めてかなり高度に英国では研究されているにもかかわらず、また、アメリカでも社会学の関係者が独自の学会を持ち、英米においては強く連携して研究が進められているにもかかわらず経済学の分野は置き去りにされていることが学会報告をしてよく分かったのが大きな理由である。 次に今回経済学説史の分野から報告することで、英米ではあまり積極的に研究されていなかったマーティーノウの経済学の理解がかなり広まり、ある程度専門家の注意を引き出すことができたことである。リカード国際会議においても、今日のリカード経済学の専門家たちに対して、なぜH.マーテイーノウが古典派経済学の継承者なのかを説明できたと思う。彼女が考えていた経済学の一般大衆への普及が、実は経済理論の平成26年度においても、積極的に報告の場を得る努力をしたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の研究に取り組んだ結果、平成26年の経済学史学会第78回大会の共通論題「女性と経済学」で古典派経済学の領域からの報告をする好機を得た。本研究課題の一つであるJ.S.ミルの経済学における賃金理論に組み込まれている、フェミニズム思想について、経済学史の専門家が集う学会において議論を投げかける予定である。これによって明確な今後の研究の推進方策を確立することができるのではないかと考える。 また、科研費にて購入したマーティーノウの経済学例解シリーズを少しずつでも翻訳し、紀要などでその内容を発表することで、女性がどのように経済学を理解したか(フェミニズム的な経済学の理解があるのか、ないのか)、また大衆化したか(国民経済に敏感な庶民の登場で女性に限らず、人々が経済学をどのように理解したか)ということを学会報告だけでなく、著述のかたちで提出する予定である。平成26年7月にリバプールで行われるマーティーノウ・ソサエティ・コンファランスにおいて報告も行う予定であるし、ソサエティのニューズレターに報告要旨をまとめて投稿する予定である。
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Research Products
(5 results)