2015 Fiscal Year Annual Research Report
消費者物価指数の精度、物価の地域差、および価格分散の実証分析
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25380269
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
樋田 勉 獨協大学, 経済学部, 教授 (00329129)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 物価指数 |
Outline of Annual Research Achievements |
消費者物価指数の精度の検証,近年の物価動向,消費者の買い物行動に関する分析を行った。最近の物価指数に関する国内外の研究が,POSデータを用いて行われる現状を踏まえ,本研究でもPOSデータを利用した。 POSデータには日次あるいは週次の製品単位の販売数量と販売額が記録されており,特売の実施に関する情報は含まれていない。このため, POSデータに記録された取引価格から,特売の判定が必要になることがある。POSデータを用いる先行研究では,特売の処理方法やそれに利用するデータの集計頻度(日次,週次,月次など)にばらつきがある。本研究では,特売処理方法についての比較分析を行い,処理法の選択が,物価や物価指数に関する分析結果に大きな影響を与えること,および,特売判定には日次データのように集計頻度の短いデータを用いるべきであることを示した。また,POSデータを利用して,新製品の登場と旧製品の退出に伴う価格変動や,まとめ売りと単位あたりの製品価格との関係についての分析も行った。 近年の物価動向分析では,2013年以降の物価変動が,原油等の国際商品価格、消費増税など、国内需給以外の要因の影響を強く受けていることを示した。また,この時期は,購入頻度が高い品目の価格上昇が大きく,消費者が物価の上昇を感じやすいこと、消費生活に密接に関係する基礎的支出の価格上昇が総合指数の上昇に寄与したため、消費者の支出の増加につながりやすいことを示した。 一方,消費者の買い物行動も,物価や空間的価格差の形成要因となりうる。本研究では,総務省「社会生活基本調査」のミクロデータを利用して買い物行動について分析し,特に,消費者の保存コスト・移動コスト・時間の機会費用を代理する社会経済的属性が,消費者の買い物行動と関連があることを示した。これは,地域的な社会経済的属性の分布が,地域的な物価差の要因となり得ることを示唆している。
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