2013 Fiscal Year Research-status Report
若年及び中高年無業者の社会的孤立とその対策に関する経済分析
Project/Area Number |
25380280
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
玄田 有史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (90245366)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 孤立無業者 / ニート / 失業 |
Research Abstract |
本研究では、ふだんずっと一人でいるか家族とのみ交流を持つ無業者(20~59歳、学卒、未婚)として定義される「孤立無業(Solitary Non-Employed Persons: SNEP)」を実証分析する。他者との交流を一切持たない「社会的孤立」の無業状況に着目し、働きざかりの年齢であるにもかかわらず無業状態にある未婚者が急増している背景とその影響を、政府統計の特別集計を通じて具体的に明らかにする。平成25年度は、新統計法の施行を通じて提供可能となった総務省統計局「社会生活基本調査」の匿名データを申請入手し、孤立無業を定義の上、その実態把握のための実証分析を行った。その結果、孤立無業者は2000年代を通じて増加傾向にあり、2006年時点で100万人を超えることがわかった。さらに孤立無業には、男性、低学歴、30歳以上がなりやすかったものの、近年はあらゆる属性で増加傾向にあることも確認された。孤立無業のなかには求職活動を行っていない場合も多く、特に家族とふだんいっしょにいる家族型孤立無業ほど就職を断念する傾向が顕著だった。さらに本年は「社会生活基本調査」(2011年実施)の特別集計も行い、2011年時点には162万人まで増加していることを明らかにするなど、より詳細な分析を行った。孤立無業は政策や法制度の検討の面からも注目を得、2013年5月31日に開かれた衆議院厚生労働委員会の「生活保護法の一部を改正する法律案」「生活困窮者自立支援法案」などの案件で、玄田が参考人として招致され、孤立無業の実態について陳述した。そこでは政策含意として、支援者支援など対策を早急に打たない限り、孤立無業が生活保護や生活困窮者の増加要因となり得ることなどを述べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究申請の研究計画に記載した平成25年度の内容である、総務省統計局「社会生活基本調査」の匿名データを申請入手し、孤立無業を定義の上、その実態把握のための実証分析を予定通り行い、査読論文を作成、採択された。採択論文では計画した孤立無業の規定要因や増加理由などについて、計量経済学の手法を用いてより詳細な分析を行った。さらに平成26年度に予定していた総務省統計局「社会生活基本調査」(2011年実施)の特別集計による分析を前倒しで実現した。その結果、平成25年度中に書籍を刊行した他、さらに平成27年度に予定していた英語論文も執筆し、海外への情報発信も行った。孤立無業は政策や法制度の検討の面からも注目を得、2013年5月31日に開かれた衆議院厚生労働委員会の「生活保護法の一部を改正する法律案」「生活困窮者自立支援法案」などの案件で、玄田が参考人として招致され、孤立無業の実態について陳述した。加えて「SNEP(スネップ)」は、「現代用語の基礎知識選 2013年ユーキャン新語・流行語大賞候補語」としてノミネートされるなど社会に普及しつつあるなど当初の計画以上に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、当初の予定どおり研究を進展させるほか、学術研究から得られた知見を広く政策に寄与するよう活動を行っていきたい。具体的には、厚生労働省が実施している「地域若者サポートステーション」「わかものハローワーク」などに情報を提供するほか、若年雇用対策や無業対策、さらには「福祉から就労」支援策などに、孤立無業の観点から必要となる対策を提案していく。加えて学術論文のみならず、リクエストに応じて新聞や論壇への寄稿やインタビューによって広く社会的に成果を発信する活動も続けていく予定である。
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