2013 Fiscal Year Research-status Report
不確実性下の国際経済統合に関するマクロ・シミュレーション分析
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25380285
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
細江 宣裕 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (60313483)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 応用一般均衡分析 / 海外直接投資 |
Research Abstract |
本年度は,主に,各国経済のインフラの効果をグローバル経済の文脈で捉えるためにマクロ分析に注力した.たとえば,先年の東日本大震災後の日本の電力危機によって,どの程度中国進出が加速されるか,また,それによってどれだけ国内産業が「空洞化」するかを分析した.動学的な世界貿易の応用一般均衡(CGE)モデルを構築して,そこでは日本から中国への進出が重要な要素となるため,逐次動学モデルの中に内生的なFDIを導入した.この分析の結果,鉄鋼,非鉄金属,窯業等の電力多消費型の産業についてはFDIを通じて中国への移転が促進され,その一方で,しばしば高度で付加価値の高い産業として注目される,輸送機械,電子機器,機械部門といった電力消費が比較的少ない部門については,国内生産が増加するといったことが明らかにされた.FDIがしばしば空洞化の元凶のように問題視される.これは確かに窯業や非鉄金属のような電力多消費型の産業に当てはまるが,他の部門についてはむしろFDIが加速することで国内生産も増加することがわかった. こうしたCGEモデルを構築する際には,産業連関(IO)表が重要なデータであるが,これは作成に手間がかかり,刊行頻度が高くないために,刊行されたときにはすでに数年前のデータとなっている.こうした数年前の古いIO表をもとに,最新のデータを追加して最近の年次のIO表を推定することがある.この推定されたIO表には誤差が含まれる,この推定されたIO表を用いてCGEモデルを構築してモデル分析した場合には,予測誤差も発生する.こうした誤差の程度や,その誤差を小さくする手法について日本の接続IO表を用いて分析を行なった.その結果,最小自乗法ではなく,クロスエントロピー法を用いるとIO表の予測誤差を小さくできるが,その効果はCGE分析における予測誤差にはあまり影響しないことが明らかにされた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたような、動学的応用一般均衡分析モデルの構築が順調に進んで、それを用いた分析も学術雑誌に掲載されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
海外直接投資を応用一般均衡分析モデルに組み込んだ先進的なモデル分析をさらに進める。とくにこれは、中国経済と日本経済の間の関係を計量的に示すことにつながるであろう。一方で、細江・我澤・橋本(2004)による応用一般均衡分析モデルに関する基礎的な書籍については、出版後、約10年を経過したこともあり、一部、更新したり、新しい内容を追加するべきときに来ている。そのため、この書籍の改訂版を用意することを目指したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度当初計画していたよりも海外出張費を中心に旅費が安価で済んだ.その一方,計画していた現地調査等があまり進まなかったこともあり,旅費の支出が計画よりも少なくなった. 平成26年度に於いては,研究成果がまとまり次第,積極的に学会報告等を行って昨年以上の研究成果に関する情報発信に努めていきたい.また,書籍の刊行のために必要な校正作業等のアルバイト代に充てることにする.
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