2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380299
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
濱口 伸明 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (70379460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 昌久 甲南大学, 学長直属, 特別客員教授 (90281112)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 空間経済 / 国際供給網 / 復元力 / 自然災害 |
Research Abstract |
濱口(研究代表者)と藤田(研究分担者)は、2011年に大規模な洪水が発生して国際供給網寸断を経験したタイの経験について関係者から聞き取りを行うとともに、被災後の対応策について調査するために、平成25年11月21日から28日にかけてタイ出張を実施した。現地ではJETRO事務所、国連国際防災戦略(UNISDR)、タイ政府防災減災局(DDPM)日系保険会社、タマサート大学経済学部でインタビューを行うとともに、日系自動車メーカーの現地法人、部品サプライヤーを訪問して、日本企業のグローバルサプライチェーンの中のタイの位置づけの重要性についても調査した。タイは自動車産業の国際的産業集積地として近年脚光を浴びている。平坦な国土は交通インフラを発達させやすく工業団地造成にも適している。また小型ピックアップトラックの需要が大きいことにも特徴があり、商用車を中心に国際的な製造拠点に成長しており、今後も企業の集積が拡大することが予想される。ただし、平坦な国土という利点は、洪水のリスクが高めるマイナスの要因にもつながっている。ロジャナ工業団地やナワナコン工業団地のような、洪水対策を強化した工業団地では企業が定着しているのに対して、資金繰りが苦しいサハ・ラタナナコン工業団地でえは対応が遅れ、企業の撤退が目立っているなど、国内の企業立地に影響を与えていることがわかった。また、すでに労働力不足と賃金上昇が顕在化しており、タイは周辺のインドシナ半島諸国とのサプライヤーネットワークを構築して労働集約的工程を分散化させていくことが不可欠となっている。しかし、発展段階が遅れた周辺地域へのサプライチェーンの拡大は、自然災害や人的要因による寸断のリスクを高めることにもつながるので、コスト削減とリスク管理のトレードオフのバランスをとる事業継続マネジメント(BCM)の検討が必要と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究により、国際供給網のクリティカルノードの形成に通常の産業集積のメカニズムと同様に、広い意味での輸送費の減少が影響を与えていることがわかっているが、本研究を進めることによって、工程間を分割することに伴って発生する固定費の減少には規模の経済が重要であるために、集積力の強い地域への拠点化が進んでいることもわかってきた。タイにおける現地調査の結果、この集積化、拠点化の力は非常に強く、洪水のあとに、対策が強化されたことによって、かえって集積が進んでいることがわかった。また、拠点化には現地におけるサプライヤーと最終組み立て企業との間の相互作用も関わっていることが明確になり、事業所単位の災害対策だけではなく、供給網に参加する企業が協力して「復元力」の強化に取り組むことによって、日本企業の国際競争力が強化されるとの予測を得た。現地調査で得た知見に基づいて発展させている理論研究は、中間財と最終財の2財・2地域で中間財に製品差別化と不完全競争を導入した空間経済モデルを基礎にするものである。この理論研究は、工程間分業が集積化、拠点化を促進し、国際的な供給網を確立することが全体の生産性向上につながることを明らかにするものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度と平成27年度には、理論モデルを完成させて論文にまとめ、学会発表等を経て出版を目指すこととする。これとともに、現地調査で得たタイ工場年鑑の事業所単位の立地データと洪水ハザードマップなどの地理情報をデータベースにして、災害リスクが立地選択に与えているか否かを分析する。この分析結果も学会発表等を経て出版を目指すこととする。立地データを最新のものに更新することによって、洪水対策の評価にもつなげることができる。
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Research Products
(2 results)