2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380299
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
濱口 伸明 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (70379460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 昌久 甲南大学, 学長直属, 特別客員教授 (90281112)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | サプライチェーン / 東アジア / 産業集積 / 空間経済 / ボラティリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
理論研究(藤田)では、交易費用の低下により中間財の取引が容易になったことに加えて、通信費用が低下したことにより社内の事業所間調整コストが大幅に低下したことによって、サプライチェーンが内生的に形成されるモデルを国際多地域に適用した場合の含意を分析している。知識労働者間の知識交換が必要な本社機能が先進国のコア地域に集積し、非技能労働集約的生産機能は発展途上国のコア地域に集積する。先進国の周辺地域には両者をつなぐ非技能集約的な生産機能が立地し、サプライチェーンは多階層的になる。実証研究(濱口)は、東アジアの中間財取引貿易の不安定性(Volatility)を月次貿易データを用いて電気機械産業と自動車産業について分析し、また分析結果をEUのそれと比較した。その結果、電気機械産業では自動車産業よりも不安定性が大きく、東アジアはEUと同等かより低い不安定性を示したことが分かった。2011年の東日本大震災とタイ洪水からの復元力は高かったことも確認できた。規模の経済が重視される電気機械産業は世界的に少数の最終組み立て立地点から世界市場に輸出される一方で、自動車産業は各市場で最終組み立てが世界の主要な市場に分散する傾向があり、この最終組み立て立地の特性を反映しているサプライチェーンの構造は両産業間で異なっており、そのことが不安定性の大きさの違いに現れている。このように産業別に現れるサプライチェーン取引の不安定性の特性は、東アジアとEUといった地域別の特性よりも格段に大きいことは本研究を通じて初めて確認された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はまず初年度に2011年に大規模な洪水が発生してサプライチェーンの寸断を経験したバンコク周辺の工業団地を視察して復旧過程を調査した。そこで得られた情報は、これまで調査した東日本大震災後のサプライチェーン復旧過程に関する調査の結果と合わせて理論モデルの構築と実証分析に現実的な視点を取り入れるために重要な役割を果たした。第2年度に分析結果を論文に取りまとめて米国のWestern Regional Science Association2015年大会(ツーソン市)や国内の研究会で報告し、そこで得られたコメントを反映して改訂したものを投稿し審査結果を待っている。 また本研究の成果の一部を用いて、APEC Informal Senior Official Meeting (2014年12月8日マカティ市(フィリピン)で開催)のシンポジウムに招待され、サプライチェーンの復元力に関するプレゼンテーションを行った。このテーマは今年のAPECの議長国であるフィリピンがサミットの優先課題の一つに取り上げられることになっており、本研究はその議論に貢献した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画を変更することが必要になる問題は生じていないが、統計分析の見直しが必要である。サプライチェーン取引に関する国際貿易統計はCOMTRADEを利用したが、論文執筆時には2010年から2012年8月までの短い期間のデータしか得ることができず、分析結果の統計的な厳密さが不十分であった。この点は学会でも指摘された問題点であったので、第3年度により長期間の統計を用いて再計算を行い、結果を比較してみる必要がある。
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Research Products
(1 results)