2014 Fiscal Year Research-status Report
資源輸出国と輸入国の間の政策競争および政策協調に関する理論研究
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25380300
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 博史 神戸大学, 大学院国際協力研究科, 教授 (50118006)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 誠一 愛知学院大学, 経済学部, その他 (70047489)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 排出量取引 / 総量規制 / 原単位規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究目的は複数の意思決定者が同時に政策を決定する場合について検討することであった。化石燃料を利用して経済活動を推進することが必然的に環境破壊を伴うという現代経済活動の特質を前提とし、かつ各時点での環境破壊の程度は当該時点の経済活動に依存するのではなく、過去からの汚染物質の蓄積総量に依存すると考えるのが最も現状を表すのに適当な想定であると考えると、現代社会は経済活動と環境規制の相克という構図を持つ。現世代の過度の資源依存体質は将来世代の居住環境を著しく悪化させることから、各国は化石燃料を使用して生産活動を行う企業に対して汚染物質の排出量を規制するための何らかの政策的対応を行う必要に迫られているといえよう。本年度の研究では、環境規制が課された経済における企業の最適行動を分析し、経済成長と環境破壊の抑制が両立するかどうかを分析した。開発したモデルの特徴は、企業の生産費が財の生産量のみならず環境汚染物質の排出量の両方に依存することと、環境規制の水準が過去から現時点までのすべての企業の汚染物質排出量の減少関数になっていると仮定することである。環境対策に積極的で財の生産に伴う汚染物質を極力抑えるような技術を採用している企業の生産費は消極的な企業のそれに比べて、生産量が同じであれば、より低くなるので、生産費は財の生産量の増加関数であるが、汚染物質排出量の減少関数である。各企業は将来にわたる利潤の割引現在価値を最大にするような生産量と汚染排出量の流列を選択するが、その利潤は財の販売収入から生産費および環境規制を守れなかったときのペナルティーを引いたものになる。規制水準以下の排出量であれば負のペナルティー、すなわち環境保全報奨金が得られるものとする。分析の結果、価格が一定である限り、各企業の最適生産量と汚染物質排出量は時間を通じて常に同方向に変化することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究初年度に続いて本年度においても、化石燃料のような資源を利用した経済活動に係る動学的最適化についてのオリジナルの研究成果を公表することができた。 初年度に開発したモデルでは、資源輸入国または輸出国のような同じ状況にある国がそれぞれ複数ある場合の分析ができなかったが、本年度は同じような生産構造を持つ企業が複数あると想定してモデルを構築し、一定の成果を得た。 ただし、本年度の研究においても、複数の意思決定者の間の戦略的相互作用については分析できていない。次年度(最終年度)に向けて、この点を突き詰めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に開発した資源輸出国と輸入国の間の資源輸出価格-環境税設定競争モデルでは、異質な国々の間の相互作用を分析した。輸入国と輸出国の政策変数は全く異なる種類のものであった。これに対し、本年度の研究は資源を利用して同じものを作る企業が複数ある場合の分析が行われた。今後の課題は、それらを統合し、複数の資源輸出国および複数の資源輸入国を想定し、輸出国-輸入国間競争に加えて輸出国グループおよび輸入国グループ内競争を同時に考えた分析を行うことである。現実の世界経済では、資源の輸出国、輸入国ともに複数存在しているため、この方向への分析の拡張は不可欠であると考える。同質主体間の戦略的相互作用の分析には通常クールノー競争モデルが用いられるので、本研究でもまずその方向で考え。初年度に得られた結果がどのように変わるか、および政策的提言として何が言えるかを追求する。
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Causes of Carryover |
研究成果を報告する目的で研究分担者とともに2015年1月にポルトガルで開催された国際学会に出張する予定であったが、研究分担者が体調不良により海外渡航不能になったため、旅費の支出額が予定を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究分担者は現在も治療を続けているが、体調の回復を待って、研究成果報告のための国際学会出席および資料収集を今年度に増して実施する。
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