2015 Fiscal Year Research-status Report
貿易構造の変化からみた生産システムの定性的・定量的分析
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25380305
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石田 修 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (40184527)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グローバル生産システム / リンケージ / 制度・政策転換 / アンバンドリング / 金融化 |
Outline of Annual Research Achievements |
comrade data より中間財貿易のデータを加工し、直近の1年のデータを加えて、アジア域内の相互依存関係を分析している。 これまで、Harschman Indexによる貿易構造の変化を確認したが、有力傾向がみられていない。そのため、データ分析のための域内貿易リンケージの変化を明確にするための指標の加工をおこなっている。さらに、ASEAN地域からの中間財の中国へ集中傾向から、これまで日本が果たした役割が代替され、財の標準化による貿易こうぞうからみたネットワーク化が進展していると考えられる。 また、データ分析で論証できない対象については、概念モデルおよび歴史分析で生産システムの構造変化を分析した。とりわけ、多国籍企業による直接投資によりファイナンスされた生産システムが変容し、直接投資を伴わない形でのグローバル生産が拡大している要因を考察した。まず、マクロ的要因として、通貨・金融制度の変化、とりわけ資本市場のグローバル化による資本の効率的調達・運用による、企業活動の拡大があげられる。さらに、金融市場を統合し、企業活動の拡大の基盤を形成した。また、企業ガバナンスがステークホルダー価値から株主価値拡大へと変化したことが、企業のコアコンピタンスへの集中とアウトソーシングを促進させた。そして、金融化を促進したことが、金融部門・非金融部門におけるアンバンドリングという大きな変化をもたらした。また、ミクロ的には、家計の金融市場への関わりが大きくなったこと、個人と企業の繋がりを希薄にし、アンバンドリングとアウトソーシングを容易にしこことを指摘する。そして、市場取引のリスクを軽減するネットワーク取引が拡大したことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データ分析に限界が有り、それに変わる分析として定性分析、概念モデルによる分析、歴史分析を行っている。 また、当初仮定したデータの分析の予想と結果が一致せず、それがどのような理由によるものかを検討している。 さらに、80年代後半以降の、アジア地域の企業行動の変化による国際生産の進展と、アメリカ企業のアンバンドリングの動きが、アジアの国際生産システムを取り込むことにより、グローバル生産の構造的特徴である、ビジネスモデル・イノベーション、プロダクト・イノベーション、プロセスイノベーションの機能分担と階層化を、データ分析によりどのように把握するかを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
アジア域内の相互依存関係を、COMTRADEデータより、可能なかぎり分析する。 アジア域内のリンケージ変化と企業行動の変化を対応して考えるための事例分析をおこなう。 さらに、①米国における制度・政策変化を明確にし、米国企業の脱垂直化(アンバンドリング)とビジネスモデル・イノベーションの推進がグローバル生産システムの基盤であるネットワーク調整を誘引したこと、②中国からみた構造変化を「組み込まれたグローバリゼーション」と「国有企業」の二面性から分析し、グローバル生産システムにおける中国の位置づけを明確し、さらに、③日本がグローバル生産システムにおいてビジネスモデル・イノベーションを主導できず、もっぱら、プロセス・イノベーション、プロダクト・イノベーションに固執している状況を確認する。このことから、グローバル生産システムの定性的構造分析を完成させる。 くわえて、グローバル生産システムの構造を、二つの側面から進化的に把握する。つまり、国際生産からグローバル生産への変容、そして、生産システムのを支える制度基盤の変容という二つの側面である。前者は、組織内統合からネットワーク統合よいう調整メカニズムの変化、そして、組織内機能の分担と組織間機能の補完性の対比から分析される。後者は、金融市場の多極化・統合化を各国の規制緩和、分散投資、スワップ取引による市場の一体化、直接投資パッケイジのアンバンドリング、直接投資の新形態などにより、国民経済の制度が解体され、グローバル生産の基盤が形成されることに注目する。また、アメリカ政策転換による経済の金融化が、企業が組織を解体(アンバンドリング)し、グローバルな企業の機能の相互補完関係、そして、ビジネスモデル構築によるバリューチェーンのガバナンスを促進することを明らかにする。
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Causes of Carryover |
今使用しているノートブックパソコンの能力の低下が著しいため、新型の発売を待っていたが、毎年度のサイクルより遅く発売されるとのことで、購入できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新型が発売されると同時に、購入予定。
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