2014 Fiscal Year Research-status Report
不完全情報,限定合理性と経済政策効果:複眼的アプローチによる検証
Project/Area Number |
25380308
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
工藤 健 長崎大学, 経済学部, 准教授 (70404316)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 金融政策の波及効果 / 財政の時系列分析 / 限定合理性 / 経済実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,情報の取得や解釈に限界を有する現実の経済主体の反応に即して,金融・財政政策効果の波及経路を明らかにすることを目指す。特に,経済主体の政策反応を複眼的に検証するために,マクロ経済データや金融市場データに加え,人々のリスク反応や不確実性下の行動パラメータを,諸条件をコントロールした経済実験から明らかにして活用する。平成26年度においては,次のような分析を行うことで研究目的の達成を目指した。 (1)「超低金利下の金融政策の波及経路:ゼロ金利・量的緩和政策の波及経路の検証」においては,前年度までに整備したマクロ経済データおよび企業財務データなどの研究基盤を用いて分析を開始し,論文作成に着手した。しかし,分析結果の解釈などに手間取り,論文を国内外の学会に投稿するには至っていない。 (2)「限定合理性の下での政策波及:経済主体の実験データに基づく検証」においては,平成25年度に着手した予備的分析の結果から,調査の質問項目に不備があり,得られた回答から実際の分析に進むことが困難であることが判明した。そこで調査方法を一部見直し,再検討することにした。 (3)「財政政策反応の変化の要因分解:景気・課税平準化と長期金利への反応と財政規律」においては,史料から抽出した制度情報と長期の財政統計などの整備したデータと予備的な分析の結果に基づき,本格的な分析に着手した。平成27年度に分析結果を論文にまとめて,国内外の学会で報告する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(3)「財政政策反応の変化の要因分解:景気・課税平準化と長期金利への反応と財政規律」については,おおむね計画通りにデータ整備を終えて本格的な分析に着手している。その一方で,(1)「超低金利下の金融政策の波及経路:ゼロ金利・量的緩和政策の波及経路の検証」については,平成26年度末までに論文の初稿を完成させて国内外の学会で報告する計画であったが,平成27年度にずれ込んでいる。また,(2)「限定合理性の下での政策波及:経済主体の実験データに基づく検証」については,調査方法の見直しを必要としており,改めて委託調査の準備を進めている段階である。以上の状況を鑑みて,現在までの達成度を「やや遅れている」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)「超低金利下の金融政策の波及経路:ゼロ金利・量的緩和政策の波及経路の検証」については,現在,作成に取り組んでいる論文の初稿を完成させて,平成27年度中に国内外の学会で報告する計画である。 (2)「限定合理性の下での政策波及:経済主体の実験データに基づく検証」については,調査方法の見直しを受けて,今後の分析の方向性を定め,遅くとも平成28年度初めまでにアンケート調査の委託を行う計画である。 (3)「財政政策反応の変化の要因分解:景気・課税平準化と長期金利への反応と財政規律」については,分析結果を論文にまとめ,平成27年度内に学会報告を行う計画である。
|
Causes of Carryover |
「限定合理性の下での政策波及:経済主体の実験データに基づく検証」で実施予定であったアンケートの委託調査が,準備段階における調査項目の不備が明らかになったため延期せざるを得なくなり,委託調査費として計上していた50万円が執行できなくなった。また,国内および国際学会における報告を計画していたが,論文を投稿できる段階に進めず,旅費として計上していた27万円が執行できなくなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査項目や方法を見直した上で,平成27年度以降にアンケートの委託調査を実施する予定である。また,「超低金利下の金融政策の波及経路」および「財政政策反応の変化の要因分解」の分析に基づき執筆中の論文を,平成27年度中に学会報告する予定であり,その旅費や論文校正費として使用する計画である。
|