2015 Fiscal Year Research-status Report
社会・経済・財政の構造転換に関する応用一般均衡分析
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25380309
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
吉田 素教 大阪府立大学, 経済学部, 准教授 (60360046)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Fiscal sustainability / Direct underwriting / Public bonds / Central bank / Dynamic CGE model / OLG model / Bohn / Local government debt |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は次の2つの研究に取り組んだ。1)「AGE (Applied General Equilibrium) Analysis による少子化の更なる進展が日本の経済・財政状況に与える影響」に関する研究の精緻化。2) 日本の地方自治体財政を対象とした持続可能性の検証。 まず1つ目の研究は昨年度に実施した同研究の改良版である。具体的改良点は次のとおりである。昨年度の研究ではシミュレーションに用いる初期資産総量を金融資産データより推計していたが、本年度は金融資産と実物資産の両データを基に推計する方法に改めた。その結果、シミュレーション開始時点における社会経済状況の再現性が高まった。本研究結果より次のことが明らかになった。1) 日本経済と政府財政を持続可能とするためには、各経済主体が将来のことに(現状と比べ)より重いウェイトを置いて意思決定を行う必要があること。2) 1) の下でも、現行どおり「公債の市中消化」を継続する場合、日本経済ならびに政府財政は政府の国債利払いコストの増加により破綻する可能性が高いこと。一方、日銀による「公債の直接引受」を実施した場合、破綻を免れる可能性があること。 続いて、2つ目の研究の概要は次のとおりである。政府が債務残高の累増に対応して財政運営を健全化させているかどうか,すなわち,持続可能な財政運営を行っているかどうかを検証するツールとして、「Bohn(1998)の方法」がある。しかし、これまでのところ、当該方法を用いた、日本の市町村財政に関する持続可能性の検証は実施されていない。そこで、本年度、日本の政令指定都市ならびに中核市を対象として当該検証を試みた。本研究より次のことが明らかとなった。1) 政令指定都市は持続可能な財政運営を行っている一方,中核市にはその姿勢が見られないこと。2) 中核市においては地域経済が悪化すると財政規律が緩む傾向が見られること。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度において、DCGE-OLG model (Dynamic computable general-equilibrium overlapping-generations model) を用いた、日本経済と政府財政の今後に関するシミュレーションを改良できたこと、ならびに、日本の政令指定都市財政と中核市財政の持続可能性テストを実施できたことは大きな収穫である。しかし、その一方で、産業毎の効率性評価に関する研究を予定どおり前進させることができなかった。そして、以上の成果を総合的に判断した結果、現在までの達成度については上記のとおり判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、次の分析を進めていく。1) 産業毎の効率性評価に関する分析、2) 平成27年度のシミュレーション分析を発展させた分析、3) 計量経済学の手法を用いて、政府財政の持続可能性をはじめとする日本経済と政府財政の現状と今後を評価する分析。
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Research Products
(3 results)