2015 Fiscal Year Annual Research Report
主観的な公平感が労働意欲に与える影響は、男女間でどのように異なるのか
Project/Area Number |
25380320
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
友原 章典 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (80448810)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 労働意欲 |
Outline of Annual Research Achievements |
多国籍企業誘致の是非については、重要な政策課題として様々な論点から議論がなされている。当該研究は、発展途上国における労働力の形成という視点から、多国籍企業による洗練された労務管理と労働意欲の問題に焦点を絞り、金銭的な誘因だけではなく、非金銭的な相互性が、労働誘因に与える影響を研究している。当該実証研究では、アジア(マレーシア、中国、タイ、シンガポール、インドネシア)で活動を行う多国籍企業の労務管理戦略と労働者の勤労意識に関する個票データを用い、ラボ実験とは異なった現実の労働市場における労使関係の在り方を明らかにしようとしている。分析にあたっては、努力のような正の相互性と怠惰のような負の相互性に関する動機は異なるかもしれない可能性を念頭に置き、この2つを区別して実証分析を行った。その結果、努力に関しては職場の人間関係が最も重要な関係があるのに対し、経営陣による雇用者への態度が怠惰と最も重要な関係にあることがわかった。また、公平感については努力との関係が見られないが、不公平感は怠惰の助長と関係があることが示された。さらに、こうした非金銭的な要因は、金銭的な要因と比べてみても、雇用者の労働誘因と無視しえない程度強い関係があることが示された。当該研究は、既存研究で一般的であった雇用創出や賃金への影響ではなく、発展途上国における労働力の形成という新たな視点を導入し、将来の産業・開発政策をめぐる議論に有用な示唆を与えるものと考える。
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