2013 Fiscal Year Research-status Report
リアルタイム同時性を考慮した政策評価と市場での価格・期待形成への影響
Project/Area Number |
25380330
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小巻 泰之 日本大学, 経済学部, 教授 (80339225)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リアルタイムデータ / リアルタイム同時性 / CPIとデフレーター |
Research Abstract |
本年度は,単にリアルタイムデータを用いる分析ではなく,リアルタイムデータの定義を考慮しつつ進めた. 為替レートの予測では推計モデルにより結果は異なるが,先行研究では日本円やカナダドルは改定後のデータよりリアルタイムデータの方が説明力は高いと指摘している(Fernandez et al., [2012]).そこで,同一時点の変数間の関係(リアルタイム同時性)を重視して,First-releaseのリアルタイムデータを用いて円ドルレートの予測モデルを推計すると,一般的な対応関係では有意とならない場合でも,First-releaseのリアルタイムデータでは有意となることが窺える.しかし,頑健性の高い結果ではない.何が影響を与えたのか,詳細な分析が課題である. 物価変数についてはCPIとGDPデフレーターの乖離(-1.09%,2007-2012年平均)の原因は,①指数算式(-0.20%),②ウエイト(-0.24%),帰属家賃の推計方法(0.15%)を調整すれば,CPIとデフレーターの乖離は-0.45%程度 まで縮小が可能であり,時期によってほぼ一致している.両統計は同じ家計消費の物価動向を表現していることが示された.この点で,両統計の発表が同じ影響を与えているのかを確認する必要がある. 財政政策の効果を財政支出乗数の推計を通じて行うと,推計を行う時期(つまり,利用するデータの違いが生じる)により,推計結果が大きく異なることが示される.特に,68SNAと93SNAでの推計結果が大きく異なる.この原因は設備投資など資本形成の推計方法にあるとみられる. インフレ連動債から得られる期待インフレ率(BEI)を基に,アベノミクスの効果を分析すると,インフレ期待への効果は,政権交代への期待要因が大きく,民主党政権時の金融緩和政策の強化の効果の方が小幅だが効果が高かったとの評価が可能である.この場合,当時のマクロ変数に対する評価を考える必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ータベースの作成の遅れから,当年度分析予定の同一のモデルにおいて一部のデータのみを入れ替え効果の検証が遅れているものの,ほぼ計画通りに進められている.しかし,新たな課題として,リアルタイムデータに関する認知ラグである.現時点でリアルタイム分析を行っても,当時のデータに対する評価(コンセンサス)は必ずしも一致をしないことがある.この点は今年度の優先課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に当初の計画にしたがって,主要な先行研究との比較を通じて,データ改定の影響を明らかにすることに努める.その他,新たな課題であるリアルタイムデータに関する認知ラグに関して,97年の景気後退を巡る状況やゼロ金利政策の解除(2000年)時の状況について,新聞報道を中心に当時のコンセンサスを検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
追加的データベース作成の遅れから研究の進捗に遅れが生じた.その結果,研究成果の発表や独自のホームページ作成が遅れたことが原因である. 昨年度末にかけて,研究の進捗を早め,研究成果を公表できるところまで到達している.今年度は研究成果の発表のため,旅費等への使用を考えている.
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