2014 Fiscal Year Research-status Report
リアルタイム同時性を考慮した政策評価と市場での価格・期待形成への影響
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25380330
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小巻 泰之 日本大学, 経済学部, 教授 (80339225)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 認知ラグ / 消費税 / 駆け込み需要 / リアルタイムデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,リアルタイムデータの入手の遅れから生じる認識の遅れ(認知ラグ)の影響について,1997年及び2014年の消費税増税を題材に検討した. 97年の増税時には,認知ラグの影響から,駆け込み需要は一部留まると見られていた.3月末にかけて駆け込み購入が増加したことが,97年4月から5月末にかけて判明する.しかし,月次統計では消費を含め経済活動の一部を捕捉しているに過ぎず,全体像を把握できるのは97年1-3月期のGDP統計を待たざるを得なかった.このような事情もあり,実際には需要が減少していた4-6月期には,新聞紙上ではプラスの評価が与えられた.特に,低金利が継続していたことから利上げまで議論されていた.しかし,この状況は97年7月中下旬以降,一変する.急激にマイナスの評価が増え,反動減が想定を超える状況になっていることが確認された.その後,アジア通貨危機や国内における金融危機もあり,経済活動は大きく落ち込むこととなる.当時の統計データ(リアルタイムベース)で在庫循環図を描くと,金融危機以前にすでに景気は後退局面入りしているといえる. 2014年の増税時には,97年当時と比較して,いろいろと有用な情報が利用可能であったにも関わらず,同様のものとなった.駆け込み需要の反動減の効果が想定を超え,反動減が大きくなり,駆け込み需要及び反動減を除いた経済実勢を即座いに判断できないことから,企業の生産行動に大きな影響を与える結果となった. この原因は,駆け込み需要と反動減が生じたことは事実であるが,その規模や持続する期間は推計値である.97年の経験を踏まえて,情報の環境を良くしようとも,正確に把握できない.また,駆け込み需要の全容がわかるまで時間を要する.経済状況を認識するまでの「認知のラグ」の存在が民間経済主体の意思決定や市場価格の形成に影響を与えることが分かる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データベースの作成は概ね順調に進む.また,分析もほぼ計画通りに進めている.その中で,次年度は,当局(中央銀行,中央政府)が有益な私的情報を有するのかについて,情報量を確認した上で進めるため,そのデータ収集も併せて行っている.また,次年度の課題として,バブル経済初期の金融財政政策について,リアルタイムベースで検証することを目的としているため,1980年代後半のデータ収集も実施している.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の課題として,バブル経済初期の金融財政政策について,リアルタイムベースで検証することを目的としているため,1980年代後半のデータ収集も実施している.
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Causes of Carryover |
一部,私的情報の有用性に関する研究に関するデータベース作成の遅れから研究の進捗に遅れが生じた.その結果,研究成果の発表が遅れたことが原因である.ただし,昨年度末にかけて,研究の進捗を早め,研究成果を公表できるところまで到達している.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は研究成果の発表のため,旅費等への使用を考えている.
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Research Products
(4 results)