2013 Fiscal Year Research-status Report
国際競争力を高める企業の直接投資戦略・プロセスに関する実証研究
Project/Area Number |
25380332
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
田村 晶子 法政大学, 比較経済研究所, 教授 (30287841)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海外直接投資 / 輸出競争力 / 企業の戦略タイプ / 戦略的投資 / グラビティ・モデル |
Research Abstract |
本研究では、国全体のマクロデータ、産業別データ、日本の企業レベルのデータ、を駆使して、日本の国際競争力を総合的に検討することを目的とする。 まず、企業の戦略タイプに適合した投資行動について、2009年、2011年に実施された、日本の製造業企業を対象にしたアンケート調査を用いて、企業の戦略タイプと投資行動の平均像を明らかにした。防衛型企業は、生産効率とコスト競争力を高めるために、業務的投資を繰り返し行う。探索型企業は、常に新しいビジネス機会を求め、先駆者として成功していても、新たな戦略的投資を行う。分析型企業は、主に探索型企業がすでに開拓し、既存の技術の組み合わせで利益が得られる市場に投資する。2011年の調査では、海外進出に対する姿勢を質問票に加え、探索型が最も積極的で、分析型が続き、防衛型が最も消極的であることがわかった。また、直接投資の目的は、相対的に防衛型は「現地生産」「販売拠点」が高く、探索型は「日本・第三国への輸出」の目的も高く、分析型は探索型に追随するように中間的な値であることがわかった。 各戦略タイプの平均的な投資行動は、必ずしも、その企業の競争力の向上に結びつくとは限らないため、企業の戦略タイプと投資プロセスの整合性が業績に与える影響を調べた。実証分析から、しっかりと計画と統制を行い、効率性を業績評価指標とすることが防衛型企業には高い業績に結びつくのに対し、探索型企業の業績にはマイナスの影響があることがわかった。分析型は中長期計画を重視しない傾向がある。 国全体のマクロデータを用いた競争力の研究として、2003~2008年の2国間貿易データを用い、Eaton and Kortum [2002]の手法を応用して、主要国の輸出競争力を調べた。中国の輸出競争力は着実に向上して,2007、2008年は,日米を超えてトップになったことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに、過去の研究で行ってきた企業の戦略タイプ別の投資行動の分析をさらに進めて、企業の戦略タイプによって異なる投資行動が、企業の競争力(業績)にどのように結びつくかの実証分析を行うことができた。これらの成果は、2回の国際学会(スペイン、ドイツ)で報告された。また、法政大学比較経済研究所での研究プロジェクトに選定され、法政大学および他大学の幅広い分野の研究者(国際経済学、国際金融、ミクロ経済学、管理会計等の分野の研究者)をプロジェクトメンバーとし、研究会を開催して報告し、有益なコメントをいただくことができた。また、マクロデータ(2国間貿易データ)を用いた国の競争力の研究も、法政大学比較経済研究所の国際コンファレンスで報告し、多くの有益なコメントをいただくことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、平成25年度に日本企業を対象とした新たなアンケート調査を行う予定であったが、アンケートの回収率があまり高くないことなども考慮し、企業ベースの入手可能なデータを用いた分析を優先することとする。平成26年度は、今までアンケート調査により分類してきた企業の戦略タイプを入手可能な企業データを用いて分類する方法を模索し、より多くの企業サンプルでの分析をめざす。研究成果は、引き続き国際学会で報告するとともに、法政大学比較経済研究所の研究会において、他分野(国際金融、ミクロ経済学、管理会計等)の研究者からの助言も求めて、研究を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では、平成25年度にアンケート調査を行う予定だったが、これを延期したため、残額が発生した。一方、研究成果を2013年9月にスペイン(7th Conference on Performance Measurement and Management Control)、2014年3月にドイツ(11th Annual Conference for Management Accounting Research)で報告し、2014年1月のアメリカ経済学会において、ブラウン大学Eaton教授、イェール大学Kortum教授と研究についての意見交換を行ったため、海外出張旅費は予定より多くなった。また、2月に海外からクレジットカードで購入したデータの支払確定が遅れたため、次年度の使用となってしまった。 次年度使用額は、上記の海外データ購入とともに、海外学会での報告にあてる計画である。
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