2014 Fiscal Year Research-status Report
国際競争力を高める企業の直接投資戦略・プロセスに関する実証研究
Project/Area Number |
25380332
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
田村 晶子 法政大学, 比較経済研究所, 教授 (30287841)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 直接投資 / 戦略的投資 / 企業の戦略タイプ / マネジメント・コスト / 企業の異質性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本企業の直接投資戦略について分析し、国際競争力を高める直接投資の特徴やそのプロセスを明らかにすることを目的としている。 本年度は、まず、日本の製造業企業に対して行ったアンケートをもとにして特定した各企業の投資戦略タイプに適応した投資プロセスが、その企業の業績を高めることを,実証的に示した。生産コストを重視し業務的投資を繰り返し行う防衛型企業は、中長期計画の策定や投資前後に利益を慎重にチェックすることにより業績が向上する一方、常に新しい投資機会を求めて戦略的投資を行う探索型企業には、投資のタイミングの認識や投資前後の利益のチェックは業績にマイナスに働いてしまうことが明らかになった。この研究結果は、2014年American Accounting Association Annual Meetingにおいて報告された。また、企業が投資を評価する手法にも、戦略タイプによる違いが見られた。 企業の直接投資が、水平型、垂直型、輸出拠点型などの複合型の、どの形態を取るのか、あるいは統合をしないアウトソーシングを選択するのかを説明する理論では、生産性の違いなどの「企業の異質性」により可変費用と固定費用が異なることが重要である。本研究では、上記の研究成果に基づき、企業の戦略タイプの違いによるマネジメントコストの違いが、直接投資の固定費用の違いをもたらし、直接投資の選択に影響を与えることを理論モデルで明らかにした。この結論は、2001年の日本企業の製造業企業へのアンケートにより明らかになった、戦略タイプによる直接投資に対する姿勢や目的と整合的である。 本研究は法政大学比較経済研究所のプロジェクトと連携しており、私の専攻分野である国際貿易の他、国際金融、契約理論、管理会計といった異なる分野の専門家の知見を集めることで、新しい視点から研究を進めることが出来ている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
企業の日本の製造業企業に対して行ったアンケートをもとにして特定した各企業の投資戦略タイプに適応した投資行動が、その企業の業績を高めることを,実証的に示した研究成果を、2014年American Accounting Association Annual Meetingにおいて報告し、より多くの研究者と意見交換を行うことが出来た。 法政大学、および、他大学の異なる分野(国際貿易、国際金融、契約理論、管理会計、マクロ経済)の研究者をプロジェクトメンバーとする法政大学比較経済研究所のプロジェクトと連携し、研究会を行うとともに、2015年3月には中間報告コンファレンスを行い、すべてのメンバーが研究成果を報告し意見を交換した。異なる分野からの知見により、日本企業の国際競争力を高める直接投資戦略についての従来の国際貿易の理論に、新しい視点を与える理論を構築できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度までに構築した、戦略タイプによって異なる日本企業の直接投資、アウトソーシング行動についての理論分析に基づき、実証研究を行う。いままでは、日本の製造業企業に対して行ったアンケートにもとづき実証分析を行ってきたが、サンプル数が少ないため有意な結果が得られないこともあった。そこで、公表された企業データを使って企業の戦略タイプを分類し、より多くのサンプルで実証分析を行う。 引き続き、比較経済研究所のプロジェクトメンバーとともに研究を推進し、アメリカブラウン大学のJonathan Eaton教授にもコメントをいただき、再来年度のアメリカ経済学会で、メンバーによるセッションを作っての報告をめざす。
|
Causes of Carryover |
当初の予定では、平成25年度に日本企業を対象としたアンケートを行う予定であったが、アンケートの回収率の低下から有意な実証結果を得るのが難しいと判断したため、アンケートを行うことを中止したため残額が生じている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
アンケート調査を行う代わりに、公表されている企業データを用いて戦略タイプを分類する。そのためにデータを購入する予定である。また、海外の学会での報告を行うほか、研究結果をアメリカ・ブラウン大学のJonathan Eaton教授に報告するなど、海外出張を行い広く研究を発表して意見交換を行うために使用する。また、昨年度に続いて、比較経済研究所のプロジェクトメンバーによる研究会やコンファレンスを行うため、その講演料を支払う。
|
Research Products
(4 results)