2015 Fiscal Year Annual Research Report
ルイス転換点後の中国労働市場の構造変化:農民工の就業選択・世代間格差分析
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25380350
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
寳劔 久俊 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター・ミクロ経済分析研究グループ, 研究員 (90450527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 真美 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター・東アジア研究グループ, 研究員 (60450540)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中国 / 農民工 / 労務管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研費研究では、農村出身の労働者(以下、「農民工」)の職務意識と離職行動との関係を定量的・定性的に考察するため、江蘇省蘇州市で6つの製造業企業(外資系企業3社と民営企業3社)の農民工従業員(約350名)に対する職務意識調査を実施した。そして農民工の地域社会・企業への定着や組織へのコミットメントが、農民工の離職行動に対してどのような影響をもたらすのかについて、人的資源論や産業社会学の既存研究に基づき、分析仮説の構築を行った。分析仮説は、以下の3つから構成される。すなわち、(1)「職場への定着」と「職務満足」という2つの潜在変数は、農民工による「職場へのコミットメント」に対して有意な正の効果を持つ、(2)「職場へのコミットメント」の高い農民工は「離職意向」が有意に低い、(3)「新世代農民工」(25歳未満の農民工)と「旧世代農民工」(25歳以上の農民工)の間でコミットメントや職務満足度、離職意向の面で有意な差が存在する、というものである。 共分散構造分析によって、これらの仮説を検証した結果、農民工の「職場への定着」と「職務満足」の度合いの高さが、「職場へのコミットメント」を有意に高めるが、その効果は「職務満足」の方が相対的に高いことが明らかとなった。さらに、「職場へのコミットメント」の高さは、「離職意向」に対して有意な負の効果を持つこと、すなわち農民工の「離職意向」の引き下げに貢献していることが定量的に実証された。その一方で、新・旧世代農民工ともに 「職場へのコミットメント」の高さが「離職意向」を有意に引き下げる一方、新世代農民工のみ「職場への定着」度の高さが「職場へのコミットメント」に対して有意な正の効果を持つことも明らかとなった。
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