2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380365
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
鞠 重鎬 横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (50282934)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 世代間所得移転経路 / 稼得能力 / 人的資本投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
世代間の所得移転において、物的投資による移転だけではなく人的投資による移転も存在する場合の所得移転経路と財政政策の効果について調べた。特に、人的投資の割合、課税及び移転支出の(定常状態での)所得水準への効果について注目し、分析を行った。その際、人的投資の稼得能力への効果が高く評価される場合に限って、人的投資の増加は所得水準を増加させる効果があるということを、シミュレーション分析を用いて示した。 所得移転の形態が異なるため、物的移転には物的移転課税が、人的投資による移転には稼得能力(労働)所得課税が課される。研究では、定常状態での所得水準が(正)である限り、所得移転経路の安定性は保証されることをも示した。これらを示した研究は、人的資本投資と物的移転の特徴を究明した、平成25年の研究実績との延長線上にある。 世代間移転における人的投資の場合、それが行われる時点では課税されない。それは、税制上においても、物的移転と人的投資による移転を区別し取り扱う必要があることを意味する。人的投資が課税上有利な立場にあることは、人的投資による移転が物的移転より有利で、それが人的資本投資の促進につながる。平成26年度の研究では、課税は所得水準を減少させる効果があり、所得移転経路の安定性及び所得水準に影響を及ぼすことを明らかにしたことにその意義があろう。 以上の作業の一部を第70回国際財政学会(IIPF)にて、“物的移転と人的資本投資が存在する場合の世代間所得経路(Intergenerational Income Path with Physical Transfers and Human Capital Investment),” の発表を行った(Lugano, Switzerland , August 20-23, 2014)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
親世代から子世代への所得移転に、物的移転と人的資本投資が存在する場合、どのような形にし、移転形態を行うかによって、子世代への所得移転の効果が異なる。それは、国による税財政政策において、世代間の所得移転の形態を勘案した上で、対応する必要があることを意味する。人的資本投資による移転は、稼得能力(earning capacity)の増加をもたらす効果がある。それに対し、物的移転は直接に古代の所得を増加させる効果がある。 つまり、物的移転には、直接に遺産(または相続)税が課されることになるが、人的資本投資は稼得能力の増大を通して間接に子世代の所得を増加させることになる。そのため、物的移転と人的資本投資とを区別し租税政策を行うことが求められる。これらの両タイプ、すなわち物的移転と人的資本投資の特徴を勘案した上で、税財政政策を工夫する必要があることを強調し研究を行った。 今までの研究では、物的移転と人的資本投資が存在する場合の世代間所得経路を求めた。その際、ある臨界点を超える値までに人的投資を行わないと、(定常状態での)所得水準を増加させないことが示された。その分析を行うに当たっては、簡単なシミュレーション分析が用いられた。以上のように、世代間の所得移転において、物的移転や人的投資を通じた効果に注目し、分析を行ったことからすると、研究の達成度はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、世代間の所得移転、つまり親世代から子世代への移転形態として、物的移転と人的投資が存在する場合の所得分布がどうなるかに関するモデルを構築し、所得分布が収束するのか発散(または、二極化)するがを分析するつもりである。その成果を第回国際財政学会(IIPF)にて、Korea and the World Economy Ⅸ Conference (Beijing開催予定)(第9回韓国と世界経済コンファレンス)での発表で発表したいと考えている。
|