2014 Fiscal Year Research-status Report
DPC参加に伴う病院間の戦略的相互依存と医療費との関係に関する理論的・実証的研究
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25380369
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
青木 研 上智大学, 経済学部, 教授 (70275014)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 診断群分類別包括支払方式 / DPC/PDPS / 平均在院日数 / 病院間の競争 / 医療経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、診断群分類別包括支払い方式(DPC/PDPS)と呼ばれる新たな報酬支払い方式の導入が、病院間の戦略的行動を通して医療費にどのような影響を与えるかについて分析している。具体的には、前年度提案したDPC/PDPSの下での病院行動モデルの妥当性について、データを用いた検証を行っている。 現在検討しているモデルは、病院が診療密度と在院日数の関係で表される技術的制約のもとで利潤を最大化するというものである。提案モデルを用いた分析からは、現実的な報酬料金を前提にしたとき 1) 病院は技術的制約上で診療方法を選択する 2) DPC/PDPSのもとでの在院日数選択は、技術的制約、報酬料金体系、潜在的需要など多くの要因の影響を受ける、という結果を得ている。さらに、昨年の研究によると、先行研究などで暗黙に用いられているモデル(以下、参照モデル)と提案モデルとでは、費用や診療報酬が変化した際の在院日数・診療密度選択に関する比較静学の結果が異なる事がわかっている。そこで、比較静学の相違を利用してモデル選択を行うためのデータベースを構築中である。 また、上記 2) とも関連するが、病院の選択する在院日数は多くの要因の影響を受けて変化する。この点は、DPC/PDPSと比較されることの多い米国 DRG/PPSの下での病院行動とは大きく異なる点である。今年度は、在院日数の決定要因についても実証分析を行った。暫定的ではあるが、理論予想と整合的な結果を得ている。 研究プログラム全体としては、提案モデルから利潤関数を導き、その利潤関数を用いて戦略的相互依存の有無・戦略的相互依存の性質、を実証的に確かめていくことになるため、提案モデルの検証はプログラム全体の土台を確かなものとするための作業である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、平成26年度中にはDPC対象病院になるかどうかの決定に関する誘導型の推定を終えている予定であった。DPC参加の分析という面では作業の遅れが見られる。これは予想以上に、DPC/PDPSの下での病院行動に関する先行研究の蓄積が少なかったためである。 ところで、現在進行中であるDPC/PDPSの下での病院行動モデルの作成は、利潤関数を求めてDPC参加の戦略的相互依存関係を分析していく上で不可欠な作業である。こうした必須の作業を「提案モデルと参照モデルの比較静学の相違を利用してモデルの妥当性を実証的に確かめる」という明確な方針のもと実行出来ている。研究の進捗としては当初の計画に比べ遅れがみられるものの、DPC参加行動の理解という面からは、むしろ計画していた以上に理解が深まっていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
病院の利潤関数を推定することで、DPC参加の決定に関する病院間での戦略的相互依存の有無・戦略的相互依存の性質、を実証的に確かめていく。この目的のために、主に次の3点を行う予定である。a) 提案モデルと参照モデルの比較静学の相違を利用して、提案モデルの妥当性について実証分析。b) 病院間での平均在院日数の差が、提案モデルの予想と整合的かについて実証分析。c) 提案モデルから導かれる利潤関数を用いて、DPC参加の決定に関する病院間での戦略的相互依存の有無・戦略的相互依存の性質についての実証分析。 a), b) の2つは、提案モデルの妥当性に関する実証研究であり、c) は提案モデルから導かれた結果をもとにDPC参加行動について病院間にどのような戦略的相互依存があるかを分析するものである。 特に c) の分析は、病院の自発的なDPC参加行動が医療費に与える影響を考える上で重要なものであるため、提案モデルから導かれる利潤関数を用いて分析を行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、実証分析を行うためのデータ収集の目的で旅費・謝金を計上していた。しかし、個別病院の患者数等について整理された公表データが無いため入力作業への支出が予定していたほど必要では無くなった。市販データにこうした変数を含むものがあるため、次年度に最新版のデータを購入するために使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
市販のデータに分析に必要な変数を含むものがあるため、繰り越し分の一部は次年度にこの市販データを購入ための物品費として用いる。また、整理された形ではないものの、必要な変数を含んだ公表データもあるため、引き続きデータ収集・資料整理を目的に旅費・謝金として支出する予定である。
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