2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380372
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
黒田 祥子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (50447588)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 労働時間 / ワークライフバランス / 補償賃金仮説 / 労働供給弾性値 / 希望労働時間 |
Research Abstract |
初年度に当たる平成25年度は、これまでの研究成果を踏まえ、日本人の労働時間の規定要因をさらに複数の角度から掘り下げる研究を実施した。 第一は、日本・英国・ドイツの労働者を対象にしたアンケート調査をもとに、3カ国の労働者の余暇に対する選好に違いがあるかを検証した。分析の結果、3カ国を比べると、実労働時間だけでなく希望労働時間も日本人の方が英国人やドイツ人よりも有意に長いことが分かった。しかし、日本人労働者は長時間労働が評価されるような職場や企業で働く労働者ほど、実労働時間だけでなく希望労働時間も長くなっていることが分かった。 第二は、ワークライフバランス(以下、WLB)施策の導入には企業側にコストがかかるため、補償賃金仮説の考え方をこれらの施策にも援用し、そうした施策を導入する代わりに労働者がどの程度賃下げを許容する余地があるのか、また企業側はどの程度賃下げをすれば施策を導入しても良いと考えるかを企業とその企業で働く労働者の双方に仮想質問を行うことにより企業=労働者のマッチデータを作成し、WLB施策の賃金プレミアムを検証した。日本で、WLB施策が普及しない背景には、従業員側は施策を導入したとしても賃金は引き下げなくてよいと考えている人が多いのに対して、企業側は施策の導入を多大なコストと考えている先が多いという、認識の大きなギャップがあることが分かった。 第三の分析として、日本で長時間労働をしている労働者が、短時間労働が一般的な欧州諸国に転勤した場合、他の条件を一定として、労働時間の減少はみられるのかを独自のアンケート調査を行い分析した。その結果、赴任前後の景気動向の違いや仕事量やHRMの変化、観察不可能な個人属性、時間外規制の違いなどを考慮したうえでも、欧州に赴任した日本人の労働時間は、現地の同僚の働き方から影響を受け、有意に減少していたことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の労働時間を中心とした分析を踏まえ、次年度以降は働き方が健康にどういった影響を及ぼすのかに研究の焦点をあて検証を行う予定である。 特に、これまでは労働時間の長さがメンタルヘルスにどの程度影響を及ぼすのかを同一個人を追跡調査したデータを用いて定量的に検証を行った研究は十分に蓄積が進んでいない。そこで、本研究では同一個人を追跡調査しながら、健康面と労働に関する情報を収集するアンケート調査を開始しており、今後はこのデータを利用して、労働時間やその他の労働条件が健康面、特にメンタルヘルスに及ぼす影響について研究を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度から実施を開始しているアンケート調査の蓄積を待って、2年度目に英語論文を複数執筆する予定である。それらの論文を国内外の学会で発表する機会を2年度目以降に複数回予定しており、それらのための出張旅費に充てるため繰り越しを行った。 上述の通り、より研究成果の水準を上げるために、2年度目および3年度目に国内外の学会で発表する際の学会出張旅費として使用する計画である。
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Research Products
(7 results)