2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380372
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
黒田 祥子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50447588)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 労働時間 / 介護時間 / ワークライフバランス / メンタルヘルス / 時間配分 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目にあたる平成26年度は、これまでの労働時間研究を拡張し、高齢化の進展に伴い、家族の介護を抱える中間の年齢層(30-50歳台)が増加する中で、こうした年齢層がどの程度介護と就労とのコンフリクトに直面しているかを検証した。分析の結果、就労しながら介護に携わる中間の年齢層の割合は2000年代以降急速に増加傾向にあること、しかしこれらの人々の平日の労働時間はむしろ増加しており、平日の介護時間は減少傾向にあること、そして介護は休日に集中して行われていることなどが明らかになった。介護と就労を両立させる労働者が今後も増加していくと予想される中で、休日における介護の集中が、労働者の心身の健康にどのような影響を及ぼすかについて検討していく必要がある。 続いて、働き方と健康に関して2つの研究に着手した。具体的には、①労働時間の長さが心の健康(メンタルヘルス)にどのような影響をもたらしうるかを、同一個人を2年間追跡調査したパネル調査を独自に実施してデータを収集し、検証を行った。分析の結果、メンタル面のタフさといった個々人の個体差を統計的にコントロールしたうえでも、労働時間が長くなると心の健康が毀損しやすい傾向があることが明らかになった。また、②同一企業を2年間追跡したパネル調査を別途実施し、メンタルヘルスを損なった従業員を多く抱える企業ほど、企業利益が低くなる傾向にあることなどを示した。 さらに、一連の研究を、一般読者にも広く還元することを目的として、これまでの労働時間に関する研究を日本語で編纂し、一冊の本(『労働時間の経済分析』日本経済新聞出版社)としてまとめ、発刊した(第57回日経・経済図書文化賞受賞)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目に着手した研究を踏まえ、最終年度に当たる27年度は、働き方とメンタルヘルスに関する研究の拡張・完成を予定している。 具体的には、26年度に行ったメンタルヘルス研究で用いた2つのデータセット(同一個人・同一企業を追跡調査したデータ)を4年間分のデータとして拡張し、働き方がメンタルヘルスに及ぼす影響と、従業員の心の健康と企業の生産性に関する検証を中長期的な観点から分析し、論文の完成を目指す。また、2つのデータセットをマッチさせた企業=従業員のマッチデータを利用して、労働者の情報と企業の情報を組み合わせながら、働き方とメンタルヘルスに関して経済学の観点から知見を導出することを目指す。
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Causes of Carryover |
継続実施中の同一個人・企業を追跡調査したデータが最終年度の5月に4年分揃うため、その最新のデータを用いた成果を英語論文としてまとめ、海外の学会で複数回発表することを展望しており、出張旅費として繰り越しを行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述のとおり、2年目の研究を拡張、論文の完成度を高めるために最終年度には広く国内外の学会等で報告することを予定している。次年度使用額は、学会出張旅費に充てる予定である。
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Research Products
(9 results)