2013 Fiscal Year Research-status Report
財政金融政策の相互依存関係とその帰結に関する政治経済学的分析
Project/Area Number |
25380373
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小西 秀樹 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (50225471)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 物価の財政理論 / 世代重複モデル / 政治経済学 / デフレ / 所得再分配 / 高齢化 |
Research Abstract |
財政政策と金融政策の相互依存を端的に表す物価の財政理論(Fiscal Theory of the Price Level)を2世代の世代重複モデルに導入した上で,世代間の物価水準と財政赤字をめぐる政治的な対立の結果,インフレ率,公債残高,財政赤字の水準がどのように決まるか分析した. このモデルで特徴的な点は,物価水準の操作も所得再分配政策の一つと考えられることである.物価の財政理論にしたがえば,今期の物価水準は政府の財政余剰の割引現在価値が政府債務の実質残高と一致するように決まってくる.そのため,若年世代の所得に課税して財政余剰を増やせばデフレになり高齢世代に有利な所得再分配効果が生まれる一方,財政赤字を増やして公債を発行すればインフレを誘発し高齢世代に不利な所得再分配効果が生じる.したがって,インフレ率は世代間の政治的な影響力の差に反応して決まってくることになる. 人口構造の高齢化は,経済的には社会保障関連の財政支出を増加させたり,労働人口の減少によって税収を減らしたりするため,物価の財政理論で考えれば,ともにインフレ要因として捉えられる.しかし,政治的には逆に,高齢世代の政治的影響力を強化するから,デフレを誘導する要因になる.また,人口構造の変化が予想されているかどうかも重要である.とくに日本の場合,高齢化の要因である平均余命の伸長も出生率の低下も政府の予想から大きく外れて進行してきた.今回の分析では,高齢化の要因を平均余命の伸張と出生率の低下に分けて考えたとき,予想されない平均余命の伸張はデフレにつながりやすく,予想されない出生率の低下はインフレにつながりやすいという結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文の草稿は完成し,国際学会での報告や査読付き国際ジャーナルへの投稿を考える段階に来ている.
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Strategy for Future Research Activity |
国際学会での報告や査読付き国際ジャーナルへの投稿を行うとともに,分析モデルを一層発展させる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2月に家族に不幸があり,急遽海外出張を取りやめたので,その旅費を当該年度中に多用途に支出できなかったから. 海外での研究報告のための旅費として使用する.
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