2014 Fiscal Year Research-status Report
海外生産が労働市場に与える影響および地域別影響と労働者の地域偏向についての分析
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25380377
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
風神 佐知子 中京大学, 経済学部, 准教授 (00510851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 正寛 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (80281872)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域労働市場 / 雇用創出 / 乗数効果 / 政策分析 / 海外生産 / 集積経済 / 労働移動 / 人口減少 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、海外生産が先進国の低技能労働者の雇用を減少させる効果が、集積経済によって軽減されるかを実証分析した。先行研究では、アウトソーシングや生産拠点の海外移転が国内雇用量に与える影響は労働者の技能や学歴により異なること、仕事の内容により差異があることが繰り返し確認されてきた。Autorらは、しかしながら、海外生産の影響を受けやすい製造業の分布が地域により異なることに注目し、地域によってこの影響は異なることを明らかにしている。しかしながら、製造業割合が高い地域であっても、その分布の仕方は地域により異なる。そこで、本補助金を用いた研究では、製造業の集積度に着目した。特定の産業が集積することで、(1)スピルオーバーや労働市場、中間財市場の充実により、集積経済の恩恵を受けて、生産性が上昇し生産活動が活発化することで低技能労働者の需要が増加する、(2)技能のスピルオーバーによって、低技能労働者の技能が上昇し海外の労働者との代替性が減少し、海外生産が国内労働へ与える負の効果が軽減する、のかどうかを検証した。その結果、特に男性低技能労働者について、集積経済が海外生産による負の効果を軽減させていることが確かめられた。 第二に、上述の、地域的雇用環境の差、および集積経済の差を受けて、製造業で新たに雇用が創出した際の他の産業での雇用創出量の乗数効果について、労働移動率と集積経済の度合い別に分析した。さらに、第三に、実際の政府の雇用創出事業の効果を地域別、集積経済の度合い別に考察した。その結果、初期の経済集積度が高い地域ほど雇用創出の乗数効果は高くなっていた。また実際の雇用創出政策効果は高齢者割合の高いところ、生産可能人口の低いところで効果が下がっていた。しかしながら、人口密度では有意な結果は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、海外生産が労働市場へ与える影響について、各労働市場の要件(労働市場の弾力性、集積経済など)を具体化し、地域労働市場の分析も行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、平成26年度に行った海外生産が労働市場へ与える影響、また地域別の雇用乗数効果および雇用創出政策の差を踏まえ、アメリカの先行研究では雇用乗数効果はイノベーションセクターで大きくなっているが、日本では具体的にどのような産業で高くなっているか、アメリカでは住宅供給が規制されていることから家賃の値上がりが労働者の効用および移動に大きな影響を与えているが、人口減少社会の日本では何が重要な要因であり、雇用創出と労働者の地理的分布に影響を与えているのかを研究する。これにより、海外生産というグローバルな影響と個々のローカル労働市場との関係を明らかにする。さらに、雇用創出政策に関しては、ある地域での正の政策効果が周辺地域または代替財を生産している地理的に離れた地域への負の効果によってキャンセルアウトされていないか分析する。これまでの先行研究では隣接地域への影響は分析されてきたが、後者への分析はない。オンラインで財を購入する際に補助金を出す政策が行われようとしている昨今、分析は必須であろう。
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Causes of Carryover |
昨年度は研究代表者が日本にいない期間があり、費用を請求できない部分があった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データの購入など手続き上の問題から使用を保留していた分を施行する。また、これまでの研究成果を社会に幅広く発表するため、英文校閲、学会出張費、論文投稿費用に積極的に使用する。さらに、当初の計画通り、研究に必要な図書等に支出する。
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Research Products
(3 results)