2016 Fiscal Year Research-status Report
海外生産が労働市場に与える影響および地域別影響と労働者の地域偏向についての分析
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25380377
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
風神 佐知子 中京大学, 経済学部, 准教授 (00510851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 正寛 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (80281872)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サービス産業 / 競争 / 生産性 / 貿易部門 / 非貿易部門 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の海外生産が労働市場に与える影響は製造業の集積度により差がみられること、雇用創出政策を行った場合、地域の人口構成により効果が異なることなどを明らかにした当該研究のこれまでの成果を受けて、本年度は、地域のサービス業との関係を明らかにした。サービス業は非貿易部門であるため、地域の貿易部門(生産地から離れた地域の消費者に供給できる部門)に依存するのか、サービス部門の生産性や雇用量に影響を与えるのかを研究した。依存する場合は、海外生産は製造業部門のみならず地域のサービス業にも影響を与えることになる。 その結果、地域のサービス部門の生産性は貿易部門の付加価値額が1%増加すると2.5~4%上昇していた。さらに、そのメカニズムとして、貿易部門が増大することで競争が発生し、低生産性の企業が退出するようなダーウィン的選択が起きるか、既存の企業の生産性が競争により上昇する(例えば競争がないときには着手しない、費用のかかるような生産性上昇のための取り組みを実施する)かが考えられるが、分析の結果、後者が支持された。ただし、卸小売を除いた非貿易部門のサービス産業を狭義のサービス部門として分析すると前者の影響もみられた。 また、より直接的に地域の製造業が海外生産を多くしている場合、その地域のサービス産業の生産性にどのような影響を与えているかを分析すると、海外生産の増大は地域のサービス産業の生産性に負の影響がみられたが、人口規模を説明変数に加えるとその影響は非有意に転じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外生産が労働市場に与える影響のみならず、地域経済へ与える影響を当初の計画通りに研究できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、海外生産が労働市場に与える影響がどのように波及するのか、人々の繋がりと消費行動から分析する。海外生産をしているような大企業の経済活動が、小規模企業や地方には波及していないとの声が聞かれる。消費行動において、経済活動が活発な企業で働く人の消費行動は、他の経済活動が活発な企業で生み出される財に偏り、消費行動に分断があるのか、同一企業(産業)内でも雇用形態(年収)別に消費行動に差異があるのか、経済波及効果が特定のネットワークに限られるのかを明らかにする。家計調査や全国消費実態調査の世帯年収階級別、都市別、世帯主の産業別等の品目別(財別)支出額を用いて、消費行動を分析する。近年、Cesar A. Hidalgoらが、自国が比較優位を持つ新たな輸出財はどの分野で創出されるかをProduct spaceの手法を用いることで産業間の繋がりを明らかにしながら分析している。この手法を応用することや他の手法を用いて研究する。
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Causes of Carryover |
平成29年度が最終年度のため、成果物の公表に伴い英文校閲や印刷費、報告地への交通費等の費用がこれまでの年より多くかかることが予測される。研究費申請時も最終年度を多く見積もっていたが、減額交付されているため、当該年度計画の研究に影響を与えなかった2万6千円ほどを最終年度にまわすこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果の公表に使用する。
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Research Products
(6 results)