2014 Fiscal Year Research-status Report
介護保険財政における市町村裁量と公費負担のあり方に関する実証的研究
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25380378
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
菅原 宏太 京都産業大学, 経済学部, 教授 (90367946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 克佳 東洋大学, 経済学部, 准教授 (20453855)
國崎 稔 愛知大学, 経済学部, 教授 (70254464)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 介護保険事業 / 介護保険料 / 地域間格差 / 垂直的財政関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は次の4点である。 1.自治体合併のタイミングと自治体特性の関連を離散時間ロジット分析した。交付税依存率が高く,高齢化の進んだ自治体ほど早期に合併に向かうことを明らかにした。 2.自治体合併に際して相対的に小規模な自治体が介護保険料を引き下げる行動を実証的に明らかにした。小規模自治体は,合併直前に介護保険料を引き下げることで給付費負担を合併後の自治体住民全体に転嫁しようとしたと解釈される。 3.厚生労働省『介護保険事業状況報告』各年版の都道府県別データと総務省『平成22 年国勢調査』の都道府県別データを用いて,介護保険料負担の集中度係数と高額介護サービス費の集中度係数の通時的変化を分析した。分析結果からは,介護保険料負担について,公的年金控除の縮小と老年者控除廃止の影響が所得段階の決定に大きく影響していること,税制改革後の介護保険料負担への対応には地域間で差があること,高額介護サービス費の給付も介護の重度化に対応したものになるか,低所得者対策であるかは地域の実態に応じて違いがあることがわかった。 4.垂直的財政外部性について,公共財供給モデルと公共要素供給モデルとの帰結の違いを理論分析によって明らかにした。どちらのモデルを用いるかによって,中央政府から地方政府への移転支出や税源移譲のあり方が逆になる可能性を明らかにした。 また,他の研究組織との共催で研究ワークショップを開催(2014年11月15日・16日および2015年2月28日)し,介護保険財政についての知見を得るとともに国内研究者との研究交流を図った。特に11月のワークショップで発表された研究報告からは,介護保険料決定や要介護度認定における相互依存の検証という本研究の課題の一つに対して,理論的な整理や分析方法の精査などの面から非常に有益な示唆を与えるものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データの精査を進める中で,当初の研究計画にあった地域支援事業について,本研究の期間内では分析に有効な数のデータを入手するのが困難であることが分かった。そのため,データの入手は継続するものの,別の側面からの分析アプローチを研究計画に加えることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に推進する研究は次の3点である。 1.介護保険料設定や要介護認定についての自治体間相互連関の実証分析を行う。特に,その市町村の財政状況や政治的要素,地域間格差是正を目的とした国からの財政移転が,市町村の行動に与える影響について考察する。 2.介護給付費負担および保険料負担の地域間格差の推移について,要素分解を試みることで介護サービス別での平準化の動向を明らかにする。 3.介護段階別の給付費の動向を考察する中で,介護サービス事業者の競争関係を整理することの重要性が認識された。そこで,混合寡占市場分析を応用し経営主体の異なる事業者間での競争戦略と公的機関の品質チェックや介護報酬設定といった市場介入の効果について考察する。本分析が,上記の「現在までの達成度」で触れた別側面からの分析アプローチである。 得られた研究成果については,26年度と同様に研究会等での発表を通じて成果の精錬に努め,国内外の学会において報告し,国内外の専門雑誌に投稿していく。また,27年度は本研究の最終年度であるため,国内外の研究者を招聘し国際ワークショップを開催する。そこでの研究発表と研究者間の交流を通じて,地方財政研究および介護保険財政研究の学術的発展への貢献を図る。
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Causes of Carryover |
(1)菅原の使用額:東北学院大学と共催したワークショップの研究発表者が謝金の受け取りを辞退したため。 (2)國崎の使用額:愛知大学において開催したワークショップの予定討論者が旅費・宿泊費の受け取りを辞退したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に開催予定の国際ワークショップに招聘する研究発表者数の増員に充てる。
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Remarks |
(1)東北学院大学TG経済学研究会との合同ワークショップ開催 テーマ:「財政政策・社会保障政策における裁量性と地域間相互作用の分析」 日程:2014年11月15日(土),16日日) 開催場所:東北学院大学土樋キャンパス 参加者総数:21名 (2)関西公共経済学研究会との合同ワークショップ開催 日程:2015年2月28日(土) 開催場所:愛知大学名古屋校舎 参加者総数:23名
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