2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380380
|
Research Institution | Osaka Gakuin University |
Principal Investigator |
日高 政浩 大阪学院大学, 経済学部, 教授 (50238309)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 租税支出 / 社会保障 / 所得税 / ライフサイクルモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国における租税支出を政府支出の機能別に推計した日高(2011)によると、一般会計の支出面において最大項目である社会保障は租税支出の面においても最大項目であり、このことが政府の活動をとらえる場合、重要な示唆を含むことが示されている。政府活動の諸機能を規模別にとらえようとする場合には、直接支出だけでなく租税支出による間接支出にも目を向けないといけないのである。 租税支出の財政上の課題や経済効果についての包括的な議論が最新の論文、Brooks ”Policy Forum: the case against boutique tax credits and similar tax expenditure”、およびWolson, Veall, Brooks, and Murphy ”Piecing the veil: private coordination and the income of the affluent”によって展開されている。 このように租税支出を量的側面で測定する必要性に加え、最近の研究では租税支出の形態すなわち、どのような税の減免措置を行うかによって異なる経済的効果、異なる財政上の問題があることが指摘されている。わが国においてこのような経済効果に注目するために、27年度において、社会保障に関する租税支出の経済的な影響について、理論モデルの構築を行った。社会保障に関しては、所得税の中に公的年金や医療・介護保険など保険料について社会保険料控除が設けられ、多額の医療費については医療費控除が設けられている。また、公的年金の給付に関しては、年金所得としての扱いが税の減額措置になっている。このような租税支出は、家計の行動から見る場合単年度だけでなくライフサイクルを通じた影響を考慮する必要がある。このモデル分析の結果の一部は大阪学院大学経済論集に収録される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
租税支出の理論分析、実証分析とも作業の見直しを行ったために、当初の予定から遅れが生じている。理論分析については、租税支出の間接支出の側面を直接支出と比較して経済効果を明らかにすることを目指しているが、その税負担の軽減の形態の違いにも拡張したため、結果の取りまとめに遅れが生じている。実証分析では、過去にさかのぼって租税支出の推移を推計することを予定していたが、理論分析の遅れが、実証分析の作業時間に影響をしたため遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
理論分析については、まず一定の分析結果がまとめられたので、速やかに公表するとともに、研究会の開催などで議論を深めていくことを予定している。また、成果の一部は財政学会等所属学会で報告を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
物品費の利用が今年度は少なかった。予定していたプリンターのトナー代金を他の予算から入手したので今年度は支出しなかった。人件費・謝金については、研究会来年度に持ち越したため支出が無かった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度に支出のなかった物品費と人件費・謝金についての支出を見込んでいるため、予算の消化が見込まれている。
|