2013 Fiscal Year Research-status Report
中国株式市場の行動ファイナンス的現象の実証研究と投資行動モデル
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25380385
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金崎 芳輔 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30204572)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中国株式市場 / リターン・リバーサル / ボラティリティ効果 / 最大収益率 / 市場の過剰反応 |
Research Abstract |
ボラティリティ効果および最小分散ポートフォリオ効果、さらに中国の投資家の過剰反応仮説に関連するテーマとして長期リターン・リバーサル効果に関する文献収集とサーベイを行った。 中国の上海証券取引所上場のA株式を対象に、1993年から2011年までの月次収益率データを収集し、収益率の時系列データベースの整備を行った。 実証研究として、過去5年間(60か月)のデータを使用し、以下の4つの属性の順位に基づく5分位ポートフォリオを作成し、事前の属性の大きさがその後の平均収益率とどのような関係があるかの確認を行った。4つの属性は(1)ヒストリカル・ベータ(2)過去の平均収益率(3)過去の標準偏差(4)過去の最大収益率、である。ポートフォリオを作成して運用する期間は、2000年から2011年までの12年間である。第1の結果として、その期間の平均収益率は、すべての属性について、事前の属性の値が小さいほど平均収益率が高いという結果が得られた。また、どの属性についても、事前属性が最小と最大のポートフォリオ(以下、両端ポートフォリオ)の間で、平均収益率には統計的に有意な差が見られた。次に、両端ポートフォリオ間のシャープ・レシオについても有意な差を確認した。最後に、4つの属性と平均収益率の間の関係の強さをFama-MacBethのクロスセクション回帰により分析した。結果として、ベータに関するファクター・リスク・プレミアムは他の属性を加えると消えた。標準偏差も同様であった。最大収益率は、平均収益率との組合せでのみリスク・プレミアムが消えたが、事後の平均収益率と比較的頑健な関係を保つことがわかった。平均収益率は、どの属性と組み合わせてもリスク・プレミアムが消えることはなかった。中国株式市場では、最大収益率が高いほどその後の平均収益率が低いという「最大収益率効果」を発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献サーベイに関しては、研究期間の初年度なので、(1)ベータとその後の平均収益率の関係、(2)長期リターン・リバーサル、(3)ボラティリティ効果、(4)最小分散ポートフォリオ効果に関する古典的または基本的な文献サーベイを行い、計画通り順調に進展した。 データの購入とデータベース作成に関しても、順調に進行した。 実証研究は、ベータに関する部分は先行研究よりもより強く、リスクとリターンの関係に関する古典的理論の予想とは逆の結果が得られており、平均収益率に関する長期リターン・リバーサル効果も他の国よりも強い結果が観察されている。ボラティリティ効果は、他の国株式市場と同様であるが、やはり強い結果が得られた。最大収益率効果は、中国株式市場に特有の効果である可能性があり、他の国で確認できるかどうかは今後の課題である。これらの現象は、中国の投資家の過剰反応が原因と推測されるが、行動ファイナンスによるモデル化が今後の研究課題として残されている。以上より、進捗状況は、概ね計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、行動ファイナンスにより過剰反応を説明するモデルに関する文献サーベイに力点を置くことにする。累積プロスペクト理論に基づく投資家行動理論と実証研究のサーベイを行う必要がある。この分野の文献には、最大収益率とその後の平均収益率との関係について触れられている文献が存在する。加えて、ヒューリスティックな投資方法と関係する投資家行動モデルの文献も探す。 年1回の財務データ更新と株価の系列の更新に伴うデータベースの整備を引き続き継続する。 データ更新に伴い、実証研究の期間を1年延ばした結果の確認を行う。また、予備的な実証研究に関しては、事前の属性を計測する期間を変化させた場合にどうなるか、およびポートフォリオのリバランスをたとえば年1回と頻度を減らしても、平均収益率との関係が維持されるかどうかなど、内容をさらに深化させる。最大収益率効果が観察される理由を説明できる、ヒューリスティックな投資方法とその結果起こる株価の振る舞いを説明できる多期間の投資行動モデルの構築を目指した研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年の株式投資収益率CD-ROMを年度内に購入しなかったこと、および資料収集、研究打合せの出張を年度内に行わなかったことによる。 平成26年度には、株式投資収益率CD-ROMを2012年分と2013年分の2年分を購入する。延期した資料収集、研究打合せの出張を平成26年度に行う。
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