2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25380390
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
伊藤 彰敏 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 教授 (80307371)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 投資信託 / ファンド / IPO / 金融グループ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、投資信託ファンドの株式ポートフォリオ構成に関して、ファンドの投資対象企業とファンドの属する金融グループとの間のビジネス上の関係がどのような影響を及ぼしているかを実証的に解明することである。この目的のため、(1)ビジネス上の関係が個別ファンドの銘柄選択・ファンドの投資パフォーマンスに与える影響について分析する、(2)投資対象企業との間にビジネス上の関係が生じた前と後で、ファンドのその企業に対する保有割合・投資パフォーマンスがどう変化したかをイベント・スタディーの手法を用いて分析する。 上記(1)に関しては、投資信託ファンドの属する金融グループと投資対象企業とのビジネス上の関係は、ファンドによるポートフォリオ構成・パフォーマンスに一貫した影響を与えていないとする実証結果となった。他方、(2)に関しては、新規上場(IPO)銘柄に焦点を絞って分析した結果、以下のことが判明した。第一に、IPOを実施する企業のメイン・バンク(最大貸し手銀行)と同じ金融グループに属する投資銀行を主幹事とする場合、そのようなIPO銘柄の長期パフォーマンスは、他のIPO銘柄と比べて相対的に悪い。第二に、メイン・バンクは、自身の金融グループ内の投資銀行がIPO主幹事としてIPOを実施した後、貸出先企業(=IPOを実施した企業)への貸し出し額を他行よりも相対的に抑制している。これらの発見は、利害の対立仮説(メイン・バンクは、質の低い企業を上場させ、自身の貸し付けリスクを抑制するとする仮説)と整合的である。しかしIPO銘柄の投資信託ファンドへの配分については、どの種類の金融グループも非常に慎重であり、IPOの主幹事を務めた金融グループは、IPOの規模が極端に大きいケースを除き、そのIPO銘柄を金融グループ傘下のファンドには、滅多に配分しないことが判明した。
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