2014 Fiscal Year Research-status Report
政策反応関数を用いた短期金利の実証分析~金利平滑化と政策シフトの検証~
Project/Area Number |
25380392
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中島 英喜 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90510214)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 政策反応関数 / 短期金利 / 金利の平滑化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本と米国の短期金利に関する過去半世紀の時系列を用いて、その動学を長期的な観点で分析するものである。分析にあたっては、短期金利を政策的に管理する中央銀行の行動を政策反応関数として定式化し、関連する5つの仮説を順次検証する。 平成26年度は、昨年度の研究をベースにして、実務への適用の可能性を中間的に(未検証の課題は考慮せずに)評価した。想定したのは、年金等の制度運営における資産と負債の総合管理(ALM)である。 まず、Taylorルールを拡張したClarida等(1998)の政策反応関数を、標準的なモデルとして用い、これを金利の下限を加味したTobitモデルに拡張して検証した。その結果、金利の下限が顕在化した期間において、特徴的な評価バイアスが認められた。またこのバイアスは、推定方法によって対照的に変化する。そこでその原因を調べたところ、標準的なモデルにおける金利の平滑化の仮定に問題があることが示された。すなわちこれらの等のモデルは、金利の下限の顕在化に伴う政策反応関数の位置付けの変化に対応できない。 そこで本稿では、金利の本源的な目標値と市場ショックをそれぞれ平滑化する政策反応関数を新たに考えた。これをTobitモデルに拡張して実証したところ、Clarida等の政策反応関数で見られた上述のバイアスは生じなかった。 さらに、1995年初に政策シフトがあった可能性を考慮して、1979~1994年のデータを使って新モデルの未知係数を推定した。そして政策目標の推移を評価したところ、係数の推定期間(16年間)を含む50年近くに亘り、現実の金利の推移を概略説明できることが分かった。このモデルが金利の実現値を参照していないことを考えると、この結果は、将来のシミュレーションにおけるこの代替モデルの信頼性を支持する材料になる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で順次実証予定の5つの仮説のうち、初年度である平成25年度は2つの仮説の実証を行った。2年目である平成26年度は、当初その他の3つの仮説の検証を行う予定であったが、最終目標の一つである実務への適用可能性を早期に評価するため、今年度は将来動向のシミュレーションのパフォーマンス評価を優先した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、平成26年度に検証した1995年の政策シフトの分析を継続しながら、順次、(3)政策のシフトが生じた時にこれらのシフトも平滑化されるのかという仮説と、(4)1995年の円金利の低下はデフレ回避の予防的引き下げだったのかという仮説を検証する予定である。 これらの分析の内、(3)と(4)の分析は、(2)の政策シフトの特殊ケースに相当する。また、この内(4)は、Orphanides and Wieland(2000)等が提起した仮説に基づく。彼等は、名目金利の下限の顕在化により金融政策の自由度が制約される点に着目し、中央銀行が予防的な刺激策を補完的に実行する可能性を指摘した。筆者の知る限りこの仮説の実証は未だ十分でないため、(4)の分析でその検証を目指す。
|
Causes of Carryover |
主な理由は2つ。まず、PCをはじめとしたIT機材について、翌年度(平成27年度)以降にバージョンアップが予定されているものが複数あったため、年度内の購入を控えたこと。もうひとつは、実証の手法や結果に関する検討先立ち、まずは実務への適用可能性の評価を優先したため、結果の吟味に基づく意見交換の頻度(旅費)が当初予定に比べて抑えられたこと。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度末における次年度使用額は、実証分析や意見効果交換に用いるIT機材の購入や意見交換の旅費として、残りの2年間で順次適当に割り当てて執行する予定である。
|