2013 Fiscal Year Research-status Report
欧州中央銀行による非標準的金融政策の波及経路とその効果
Project/Area Number |
25380416
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
高屋 定美 関西大学, 商学部, 教授 (60236362)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 欧州危機 / ユーロ危機 / 欧州債務危機 / 欧州中央銀行 / EU経済 / CDSプレミアム / 伝染効果 |
Research Abstract |
本年度は欧州中央銀行の行った非標準的政策に関する研究のサーベイを行うと共に、欧州債務危機が発生した後の影響に関する実証研究とそれへの対応策についての論文(関連論文5本)を執筆した。 まず、前者に関してはリーマンショック後の2008年以降の欧州中央銀行による金融市場への流動性注入から、2012年までの債務危機対策に関する研究論文の渉猟・理解を深めた。流動性注入に関しては、予想されたとおり、多くの研究で金融機関の経営を支援したことで金融システムの安定性に寄与したことが実証的に報告されている。また、債務危機対策においても、いわゆるドラギマジックが債務危機国の国債金利やCDSプレミアムを低下させたことをもって危機の回避に貢献したと報告している。ただし、米国連邦準備と異なり、欧州中央銀行は、いわゆる量的緩和を行っておらず、金融機関の支援を通じた金融システムの安定に軸足が置かれている。そのため、緩和の規模が十分ではないという研究もある。 また、後者に関しては、ユーロ圏のCDSプレミアムを利用して、CDSプレミアムが何によって変動したのか、またCDSプレミアムの変動が実体経済にどのような影響を与えたのか、またそのプレミアムがユーロ圏の国債金利を支配的に動かしたのかどうかを実証的に研究した。さらに、債務危機といわれる過剰な財政赤字発生がユーロ圏内で伝染効果をもって伝播したのかどうについても、実証的に検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である本年度の当初の目標は、非標準的金融政策に関連論文のサーベイと、関連する研究を進めることであった。それらに照らすと、概ね順調に進展しているものと考える。サーベイに関しては日米の非伝統的金融政策ともあわせて行っている。ただし、まだそれらの金融政策への統一した見解はないものといえる。ただし、欧州中央銀行による非標準的金融政策の中で、特にドラギ総裁によるドラギマジックの効果に関する実証研究はまだ多くは出ていないものの、本研究ではCDSプレミアムへの効果は有意であったものと観察される。 さらに関連論文を5本(うち2本は本年度中に出版済み)を執筆することができ、今後の研究を進める上での基礎研究となるものと考える。特にCDSプレミアムに焦点をあて、その変化が投資や債務危機に与えた影響を実証的に検証した。さらにはCDSプレミアムがどのような要因によって変化したのかについても検証した。それにより、ニュースなどの影響が支配的であったことが確認された。ただし、外国出張ができなかったので、来年度、その分の出張を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方法については特に変更はない。今年度に学内役職のため外国出張がかなわなかったため、来年度は欧州への出張を実行し、国際学会への参加と中央銀行関係者、研究者へのヒアリングを行う予定である。 また、本研究に関連した実証研究を進める予定である。現在進めている欧州中央銀行の非標準的な金融政策の効果を時系列的に検証する予定である。具体的には非標準的金融政策の行われた日時を確認し、その前後の資産価格の変動を考察する予定である。また、量的緩和政策を行った米連邦準備と日本銀行の政策効果との違いを実証的に明らかにしてゆく予定である。 これらの実証研究と共に、ユーロ圏での非標準的金融政策の意義を理論的に検討する予定である。そのため、非伝統的金融政策に関するEggertsonらの研究を参照する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は学内役職のため外国出張ができず、次年度に行うこととなったためである。 次年度は研究2年目になるので、そのために研究費の使用が必要となる。また、昨年度実施できなかった欧州での現地調査およびコンファレンス参加も行うために、複数回の外国出張を8月以降に行う予定である。そのため研究費の使用が必要となる。また、必要なデータの収集のため、支出を行い、さらには、必要な文献収集、国内での学会発表・参加も計画している。
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