2013 Fiscal Year Research-status Report
近世日本における災害甘受型防災機構の社会経済史的研究-信濃川流域を事例として-
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25380419
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長谷部 弘 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50164835)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 災害史 / 信濃川 / 千曲川 / 川中島 / 西蒲原 / 共同体 / 地域社会 / 環境と人間 |
Research Abstract |
本年度は本研究の初年度であることから、特に新たな史料の発掘調査を中心に研究を進めた。具体的には、信濃川上流の千曲川沿岸地域(長野県上田市旧上塩尻村)、および信濃川中流域の河川沿岸地域(長野市川中島旧今井村)、信濃川下流域の河川沿岸地域(新潟県新潟市西蒲区旧中郷屋村)の史料調査を中心に進めた。連携研究者の協力を得ながら各種史料存在状況の確認、情報の整理、ケースによっては目録作成、資料の写真撮影および分析等を行った。 調査・研究成果としてあげられるのは、先ず第一に、上田市旧上塩尻村およびその周辺村落に残された治水および川普請関連の文書史料について追加史料の存在を確認して撮影をおこなうことができた。第二に、今回初めて調査に取り組んだ長野市川中島の旧今井村に関する近世村落に関する基礎資料(庄屋文書)について、長野市立博物館所蔵小林家文書および長野県立所蔵堀内家文書の調査と撮影作業を行い、複雑な残存状況にあった両者の史料群をつきあわせ、全体像を組み立てることに成功した。これによって、以後、近世および幕末明治初期にいたる今井村の村落構造を分析し、その上で治水と防水の地域組織やそれを支える社会構造について分析する基本的な枠組みを設計する準備が整った。また第三に新潟市中郷屋村に関しては、既に発見されている史料群の分析を進めることによって、同村の置かれている治水条件(洪水被害の流下型地域と湛水型地域の狭間に位置している)ことが判明し、それにあわせて治水・防水組織がどのような編成の仕方をしているか明らかにする、という課題を新たに確認することが出来た。 年度末に研究実施の打ち合わせ会を開催し、調査計画実施に向けての打ち合わせを行い、以後、中間報告書をまとめてHPおよび諸学会等で逐次報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
信濃川上流域の上田周辺の村落調査についてはプロジェクト以前からの蓄積があったため、新たな家別文書の発見等もあって予想以上の資料調査が進んだが、中流域の河川沿岸地域(長野市川中島旧今井村)については資料館の資料調査は未だ完結させることができておらず、未完成の状態である。改めて既存の二つの史料群以外の文書史料を探す必要があることが確認できたが、それにあわせた現地調査を実施する事が叶わなかった。また、信濃川下流域の河川沿岸地域(新潟県新潟市西蒲区旧中郷屋村)については、個人の家の所蔵資料である、という性質も影響して、調査と史料撮影等の基本的な作業を終了させることができなかった。以上、基本的に調査現場の事情による計画執行作業の遅延が大きな理由である
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降、初年度に実施した資料調査対象地を中心として更に資料の整理と資料撮影作業を進める。同時に各地域社会における新たな防災関連史料の発掘も試みる。特に史料調査とならんで対象地域の地理環境事情を含めた多目的現地調査も進める。さらに、初年度の範囲で得られた研究成果を、HPならびに諸学会で公開・報告し、多方面からの研究上の示唆を得ながら、研究全体の質的進化と規模的拡大を図っていくことを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた3つの調査対象地の内、上流域の上田と下流域の西蒲原については一定の成果をあげつつ調査進行中だが、特に信濃川中流域の長野市川中島、旧今井村関連の史料調査が予定より遅れたことと現地調査を実施することが出来なかった。また新たな防災関連の史料調査が現地交渉が予定したスケジュール通りに進まず、遅れている。 信濃川中流域の長野市川中島旧今井村関連の資料について、長野市博と長野県立歴史館の領邦に分かれて所蔵されていることが確認されたため、次年度以降は特に両者について積極的に資料調査と撮影作業を進めると同時に、欠落部分の資料残存確認と地理環境状況確認のための現地調査を実施する。また信濃川全流域にわたる地域防災関連史料の調査を進める。
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