2013 Fiscal Year Research-status Report
総合商社の構造比較と競争優位に関する研究ー三井物産・三菱商事を中心に-
Project/Area Number |
25380421
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
鈴木 邦夫 埼玉大学, 経済学部, 教授 (50132783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 直樹 埼玉大学, 経済学部, 准教授 (00451732)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 総合商社 / 三井物産 / 三菱商事 / 貿易 |
Research Abstract |
本研究の目的は、三井物産・三菱商事が、メーカーの単なる代理人ではなく、なぜ世界市場において独自に活動を行う主体になりえたのかを、商社の内部構造に即して明らかにすることである。 この目的のため、本年度では、第1に、米国の国立公文書館に出張して、三井物産・三菱商事関係の資料を閲覧し、必要な資料を撮影によって収集した。三菱史料館においても必要な資料を収集した。 第2に、これらの収集資料を分析した。三井物産に関しては、とくに1910年代という第1次世界大戦を含む経済的活況期において、サンフランシスコ支店・シアトル出張員が、決算の際にどのような経理操作をおこなったのか(利益額の操作、他店や他部門への利益の付け替え、リザーブ[準備])の設定など)や、本店への送金の仕組み、現地での資金の調達方法などを明らかにすることで、本店本部(とくに会計課・調査課・業務課)と支店との間にどのような取り決め・ルールが設けられていたのか、本店本部や商品部本部と支店・支部との間にはどのような権限移譲がおこなわれていたか、および支部(支店内の存在)は商品部本部からどのようなコントロール(指揮・命令)を受けていたのかを明らかにした。 三菱商事に関しては、とくに昇給の仕組みを分析した。三菱商事の特徴として、学歴が同一であれば、入社後、長きにわたって月給が同じように上昇することを明らかにした。これに対して三井物産では、昇給の時期、昇給額が個人によってまちまちである。三井物産では、各決算期において個人が属する最小単位(掛あるいは支部)がどれだけ利益を生み出したかが分かるため、個人ごとに査定をおこなえる組織となっていた。三菱商事の場合は、個人が属する最小の単位がどれだけ利益を生んだかを計算できないため、個人の力量を長期間でしか判定できないので、公務員のような昇給の仕組みができたと推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的のうち、今年度に関わるものはつぎのとおりである。 全体的な商社の構造、すなわち、組織、内部取引のルール、価格変動リスク・与信リスクの管理方法、商品取引資金の調達方法、インセンティブの仕組み(職員に対する動機付け)、職務権限の委譲などに焦点をあて、三井物産・三菱商事の内部資料を詳細に分析することによって、両社の構造がどのように違うのかを明らかにすること。 三井物産に関しては、支店レベル(サンフランシスコ支店・シアトル出張員)の資料を収集し、これを分析することで、本店本部(とくに会計課・調査課・業務課)と支店との間にどのような取り決め、権限移譲がおこなわれていたかを、具体的な利益の付け替え、リザーブ(準備金)の設定、本店への送金の仕組みなどに即して明らかにし、三菱商事と比較した。 三菱商事に関しては、各決算期に各組織(支店)がどれだけ利益を生み出したかが計算できない組織であるため、職員に対する昇給によるインセンティブは短期的・中期的には働かないことを明らかにし、三井物産との違いを明確にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、米国の国立公文書館と三菱史料館、および三井文庫において関連資料の収集をおこなう。 とくに平成26年度では、総合商社が持っている機能のうち、もっとも基本的な機能である商取引機能に焦点をあてて、この機能を発揮するためにどのようなルールがなぜ定められたのかや、そのルールがなぜ、どのように変化したのかを、三井物産と三菱商事とを比較しながら明らかにする。 とくに平成27年度では、総合商社がどのようにリスクを管理したのかや、商品取引資金をどのように調達したのかを明らかにする。前者については、価格変動リスクの管理と資金回収リスクの管理が部・支店・支部レベルでどのように行われていたのかを実証的に明らかにし、それにより、三井物産・三菱商事の組織の違いを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3月にも2人で米国の国立公文書館へ出張して資料収集をする予定であったが、未執行分では予算的に費用を賄えないため、未執行分を次年度に繰り越した。 次年度では、今年度から繰り越した額と合わせて、夏と冬の2回、米国の国立公文書館へ出張し、三井物産・三菱商事の在米支店の資料を調査・収集する予定である。。
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