2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25380430
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田北 廣道 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50117149)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 環境史 / 工業化 / 環境汚染 / 住民運動 / 化学工業 / 寡占的大企業 / 環境政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
第二帝政期ドイツにおいて「環境」運動は、エコ時代と呼ばれる1970年代に匹敵する隆盛を見せた。本研究では、1880年代以降「環境」運動が下火に向かう経緯を、1880年代以降の認可審査にあって重要な役割を担った営業監督官に焦点を合わせて考察した。その際、営業監督官を「企業家寄りの専門家」と見なす古典学説の批判的検討を中心にし、認可審査の判断基準として科学技術主義が勝利する過程を、次の2つの観点から探りつつ接近した。 一方は、1880年代から第一次世界大戦前の認可闘争・審査において営業監督官の果たした役割の検討である。双子都市ヴッパータールに立地するダール染料会社に関する検討から、1)1880年代一杯彼らは大きな役割を果たしていなかった、2)1890年代半ば以降認可条件の提案といった積極的活動を行った、3)しかし、「年次報告書」の中で明記したように、実践可能な技術的条件を提案しており、「職務規則」や国王政府の要請といった縛りの中で労働者・住民保護のために最大限努力していた。 他方は、企業利害の代弁者である「化学連盟」が、彼らを実際に味方と見ていたかの検討である。化学連盟の機関誌である「化学工業」を手がかりに、認可審査の改革を求めた嘆願活動と「年次報告書」の取り扱い方の両面から接近した。1)化学連盟が、営業監督官に期待を込めて肯定的評価を与えていたのは、「執行規則」の弾力的運営による審査の迅速化を要求していた前半(1880-1895年)に限定される、2)「営業条例」の改訂が日程のぼる後半(1895年末以降)になると、19世紀的な法秩序の番人、敵対者としての評価に変わる、3)もう一つの期待は、1880年代以降労使対立が先鋭化するなかで、労使仲介的役割に関係していた。 営業監督官に関する古典学説は退けられたが、実践可能な認可条件の提案を通じて、心ならずも科学技術主義に勝利に貢献した。
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