2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380433
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
柳澤 治 首都大学東京, 都市教養学部, 名誉教授 (00062159)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ドイツ / ナチス体制 / 第二次世界大戦 / 戦時経済体制 / 手工業 / 経営閉鎖 / 合理化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はドイツの第二次世界大戦期における戦時経済体制と資本主義との内的関連を明らかにすることを目的としている。本年度は、研究計画に従い民需部門での企業整備と軍需経済化の問題を取り上げ、ドイツ・ベルリンの連邦文書館、ミュンヘンの州立図書館・現代史研究所図書館を中心にして、現地研究を実施するとともに、それを通じて入手した資料を分析し、考察した。その際にとくに重視したのは、民需部門に基礎をおいてきた中小企業(いわゆる「手工業」)である。金属加工・木工・皮革加工をはじめとする各種の「手工業」が、戦時期にいかに変容し、戦時経済体制の中に組み込まれていったかを明らかにした。その結果、次の四点が解明された。(1)ナチス期の「手工業」は経営的に分化し、その上層部分に工場制的経営を生みだしていた。(2)戦時経済の下で「手工業」は合理化政策の対象となったが、しかしそれは戦争末期になってから、しかも一部の業種に限って実施されただけであった。(3)労働力不足の解決のために「手工業」も経営閉鎖の対象とされたが、しかし、「手工業者」やナチス党内の反対によってごく限られた規模に止まった。(4)中小経営者はナチズムの最も有力な推進力であったが、本研究は彼らがナチス体制をその最終段階まで支持したことを明らかにした。なお、研究実施計画に設定したナチス・ドイツの戦時経済思想の日本への影響の解明に関しては、本研究者の従来の研究成果をさらに土台にしてそれを展開し、英文の書物として外国出版社から刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去2年間における研究の進行状況は全体的として順調で、外国(ドイツ)での史料蒐集や文献調査も予定通り実施され、それらの分析に基づく研究成果の発表(日本語著書1、欧文著書1、日本語論文4本)が予想以上に進展したことに満足している。その最大の理由は、本科学研究費助成金により外国出張が可能となり、本格的な現地調査が実施できたこと、日本国内の諸大学図書館において関連文献を閲読・検討し、十分な時間を本研究のために使用できたことにある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は本研究助成金の最終年度となるので、これまでの研究の全体的な総括を試みる予定である。その際、これまで公にした研究業績に対する国内外の専門研究者の論評に応えるため、また細部の残されたいくつかの論点を実証的に解明するために、ドイツの文書館・図書館での現地研究を本年度も実施する計画を立てている。それらに基づき研究成果の包括的なとりまとめと書物による刊行の準備に入ることも目標にしている。その際、本研究が分析したドイツにおける戦時経済と企業経営の関係と、日本における同じような問題との比較をも研究対象に含めたいと考えている。
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Research Products
(6 results)