2013 Fiscal Year Research-status Report
18世紀カタルーニャ綿業にとっての捺染亜麻布と植民地産綿花
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25380436
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
奥野 良知 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (20347389)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カタルーニャ / 綿工業 / 綿業 / 更紗 / 亜麻 / 地域工業化 / 産業集積 / 制度 |
Research Abstract |
25年度の研究は、主に次の2点に大別される。一つは、25年9月に1ヶ月間バルセローナで行った資料調査である。調査の目的は、1)更紗製造企業や、主要な更紗製造企業によって1781年に共同で設立されたバルセローナ紡績会社が、綿花の輸入を促進するという明確な戦略のもとで捺染亜麻布の植民地への輸出を行っていたのかどうかという点、2)植民地産綿花を使用する方がマルタ綿糸を使用するよりも綿布の質の向上をもたらすという明確な認識が更紗製造業者にあったのか否かという点、3)2)に関連して更紗製造企業やバルセローナ紡績会社が長繊維であるアメリカ綿(=植民地産綿花)と短繊維であるレヴァント綿花やそれから作られたマルタ綿糸(=レヴァント綿糸の一種)についての素材の技術的な違いについて言及しているか否かという点を、一次史料を用いて調べることにある。 今回の調査から得られた成果は、1)に関しては更紗製造企業やバルセローナ紡績会社が捺染亜麻布を植民地に輸出した要因として、帰り荷として植民地産綿花を輸入する意図があったことはほぼ裏付けられた。2)に関しては、植民地産綿花の質が非常に高いという記述には度々出くわすが、それがマルタ綿糸の使用と比べて大きな質の向上をもたらしたかどうかはまだ分からない。3)に関しては、繊維の長短に関する素材の技術的な比較について記述にはまだ出会えていない。 25年度の研究のもう一つの柱は、植民地への捺染亜麻布の輸出が激増する要因の一つである1778年の「自由貿易」規則以前に行われていた亜麻布捺染についての論文作成であり、外国産亜麻布の捺染はなぜ1760年代に始まったのか、なぜ1770年代半ばに生産が増加したのか、なぜ国内市場が主な販路だったのか、という点について論じている。この論文には、9月の史料調査の成果ももちろん生かされている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
9月の史料調査では、調査の目的を達成するために必要と想定されていた史料を「発見」することができた。また、調査の目的の3点のうち、「研究実績の概要」に記したように、すべてではないものの、かなりの重要な点を一次史料によって明らかにすることができた。これは初年度としてはまずまずの成果である。また、1778年の「自由貿易」規則以前に行われていた亜麻布捺染についての論文も作成することができた。また、『カタルーニャを知るための50章』の出版も編著者として行うことができたし、3月には、カタルーニャの独立に関しての2件のシンポジウムに登壇者として関わり、カタルーニャの独立に関してのNHKの特集への協力と取材にも応じた。以上のことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年も9月に史料調査を予定しているが、まず9月の調査までに、1)昨年の調査で入手した史料の読解と整理を進める、2)カタルーニャ図書館に史料のデジタル複写を依頼する、3)亜麻布捺染と植民地産綿花に関する論文の準備を進める、4)亜麻布捺染の推移に関する論文の準備を進める、以上の点を行う。 9月の史料調査では、昨年度と同じ次の3点、1)更紗製造企業や、主要な更紗製造企業によって1781年に共同で設立されたバルセローナ紡績会社が、綿花の輸入を促進するという明確な戦略のもとで捺染亜麻布の植民地への輸出を行っていたのかどうかという点、2)植民地産綿花の使用はマルタ綿糸の使用よりも綿布の質の向上をもたらすという意図が更紗製造業者にあったのか否かという点、3)2)に関連して更紗製造企業やバルセローナ紡績会社が長繊維であるアメリカ綿(=植民地産綿花)と短繊維であるレヴァント綿花やそれから作られたマルタ綿糸(=レヴァント綿糸の一種)についての素材の技術的な違いについて言及しているか否かという点について調査を行う。 なかでも、2)に関係する点で、植民地産綿花を使用する方がマルタ綿糸を用いるよりも綿布の質が向上するという認識が更紗製造業者にあったのかどうか、3)に関係する点で、繊維の長短に関する素材の技術的な比較について記述があるかどうかという点について、引き続き調査を進める。 また、なぜ植民地ではカタルーニャ産更紗よりも捺染亜麻布が好まれたのかという点についても調査を進める。 さらに、調査後には、亜麻布捺染と植民地産綿花に関する論文と、亜麻布捺染の推移に関する論文の作成を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
史料のデジタル複写の依頼を年度中に行うことができなかったため。 史料のデジタル複写の費用として使用する。
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Research Products
(5 results)