2013 Fiscal Year Research-status Report
英国「マネー・ドクター」に関する研究‐オットー・ニーマイヤー卿と大不況下の世界
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25380453
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 純 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30413719)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 両大戦間期 / 金融的影響力 / 多角的貿易・決済システム / オットー・ニーマイヤー卿 / 英国大蔵相 / イングランド銀行 / 1930年代大不況期 / 英系海外銀行 |
Research Abstract |
本年度はまず、イングランド銀行のオットー・ニーマイヤー卿が活躍した両大戦間期世界経済の構造を明らかにすることを目的とした研究活動を行った。具体的には、イギリス経済史を中心に世界経済史に関する基本的な文献と資料の収集、そしてそれらの読解を行った。文献と資料は国立国会図書館、一橋大学付属図書館、同大学経済資料室、そしてアジア経済研究所図書館などと併せ、英国国立公文書館(The National Archives)などからら主に収集した。 収集した資料は、国際連盟(League of Nations)刊行の国際収支に関する統計資料Balances of Payments(1930-1939年)、また英国国立公文書館所蔵の英国大蔵省(Treasury)や英国商務院(Board of Trade)の資料などが主たるものである。これらの資料はオットー・ニーマイヤー卿が活動した両大戦間期世界経済の構造を把握する上で必要不可欠な資料である。とりあえず、2014年5月24日に同志社大学で開催される社会経済史学会の全国大会で報告するレジュメを作成する上で必要な資料は集めることができた。 本年度は論文をまとめるには至らなかったが、同上の学会の報告書を執筆し、報告レジュメの作成もほぼ完成させることができた。この報告はイングランド銀行を含む、大蔵省、外務省、そして商務院などによって担われた1930年代イギリス対外経済政策の展開が、いかに多角的貿易・決済構造の崩壊を導いたのかを明らかにしようとするものである。 なお、当初、イングランド銀行の活動、特にオットー・ニーマイヤー卿の活動に焦点を当てることを企図していたが、研究遂行上、まずは英国大蔵省の意図・活動に注目する必要があることが明らかとなった。したがって、本年度は大蔵相の資料の収集・読解に多くの時間をとることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の最終的目的は、両大戦間期を代表する英国の「マネー・ドクター」オットー・ニーマイヤー卿の活動の検討を通して、パックス・ブリタニカからパックス・アメリカーナーへの転換期とされる両大戦間期の世界、特に1930年代大不況下の世界の構造と特質を明らかにすることにある。そこで本年度は、オットー・ニーマイヤー卿の活動の詳細を一次資料を用いて明らかにする作業に入る前に、両大戦間期の世界経済の構造について、イギリスの対外貿易・決済関係を軸としながら明らかにする作業を行う予定であった。 イギリス経済史や世界経済史関係の文献や基礎資料を国内外の図書館や資料館において収集することに多くの時間をとられたが、収集した文献・資料の読解もある程度行うことができ、その結果、2014年5月24日の社会経済史学会において成果を発表することが可能となった。既に報告書を上記学会事務局に提出済であり、報告レジュメもほぼ作成し終えている。 この報告によって、イングランド銀行、大蔵相、外務省、そして商務院などによって展開された1930年代イギリス対外経済政策が、いかに19世紀末葉にイギリスを中心に編成された多角的貿易・決済システムの解体を導いたのかを明らかにすることができた。 本来ならば、一次資料を用いてオットー・ニーマイヤー卿の活動実態を詳細に渡って検討する予定であったが、まずは、その背景を成す1930年代大不況下の世界の全景を把握する作業に力点をおくこととなった。このように、ニーマイヤー卿の活動を中心とする研究から若干の逸脱があったため、達成度は「おおむね順調に進展している」という評価になってしまった。しかし、本来の1930年代大不況下の世界経済の構造と特質の把握という大局的な研究目的にはおおむね沿った研究を行うことはできたと確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
未だ研究に必要な資料を収集し終えていないので、国立国会図書館をはじめとする国内図書館、アジア経済研究所などにおける資料収集活動を継続して行う。一方で、イギリス経済史と世界経済史の資料を収集するために、英国公文書館やオーストラリア公文書館をはじめとする国外の図書館や文書館での資料収集活動も行う。 また、収集した文献・資料を可能な限り速やかに読解し、紀要、および全国学会誌への投稿を行う。また、可能であれば、来年2月には国際学会(Asia Pacific Business and Economic History Conference)での発表を行い、英語論文も作成・投稿したいと考えている。 なお、研究内容についてだが、当初の予定は、英国「マネー・ドクター」オットー・ニーマイヤー卿の活動を中心に、両大戦間期イギリスの対外経済政策、特に金融的影響力行使の実態について明らかにする予定であった。しかし、他の研究者のアドバイスを受け、あるいは自ら研究を進めていく中で、1930年代イギリスの対外経済政策の全体像を把握する必要があるのではないかと考えるに至った。 したがって、英国国立公文書館所蔵の大蔵相と商務院の資料に基づき、これまで行ってきたイギリスの帝国諸国、アルゼンチン、デンマークに対する通商政策に関する研究を踏まえ、1930年代初頭に形成されたイギリス帝国経済ブロックの構造と特質を明確に提示する作業を行っていきたいと考えている。 具体的には、5月の社会経済史学会全国大会におけるデンマークに関する報告を基に論文を作成し、同学会の機関紙『社会経済史学』に投稿する。次に、秋に開催される西洋史研究会大会において、「1930年代初頭イギリス帝国経済ブロックの構造と特質」というタイトルで発表し、この報告を基に、同学会の機関紙『西洋史研究』において論文を発表する予定である。
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Research Products
(2 results)