2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380460
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
吉森 賢 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 名誉教授 (20182834)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドイツ / イギリス / 鉄鋼企業 / クルップ家 / ダービー家 / 企業衰退 / 衰退要因 / 企業統治 |
Research Abstract |
企業衰退と産業衰退に関する研究において最もしばしば研究者により採用される分析手段は複数国の代表的企業間の国際的・歴史的比較である。とりわけドイツとイギリスの比較は多くの教訓に富む。当該年度においては産業革命を先導したイギリスが第一次世界大戦以前になぜその製造業における世界的地位をドイツに奪われたのかを鉄鋼企業を例にとり明らかにした。イギリスは初代ダービーによる木炭の代わりにコークスを使用するコークス炉の発明のみならずベッセマーの転炉、ハンツマンの坩堝鋼、コートのパドル法など製鉄・製鋼技術のほとんどすべての発明国であり、それはとりわけクエーカー教徒に負うところが大きい。 しかしダービー家は1883年4代目の時代にクエーカー教徒から上流階級に一般的であった保守的な英国国教会へ改宗し、鉄鋼企業から完全に撤退し、地主として紳士の上流社会へ参入した。この状況はイギリスで多く見られた現象であった。イギリスでは上流階級へ参入することにより社会的地位と名誉を得ることが一般的な企業家の願望であった。 これに対してドイツでは成功した企業家は企業の運命と強く一体化し、その独立性と永続性を最重要な目的とした。このことは第一次世界大戦以前に世界的な地位に達したクルップ家の二代目あるアルフレート・クルップの経営理念により明らかである。さらにドイツは国家統一の遅れによる後進性とこれを克服するための富国強兵の国家的目標が産業ナショナリズムの形で企業家精神を高揚させた。しかしそのクルップ社は最近においては売上高における世界的地位は10位以下に落ちた。自らは一基も溶鉱炉を建設したことのない新興企業家のミタルは破壊的かつ合理的戦略により世界首位の地位を得た。これは日本の鉄鋼企業のみならず全製造業の企業に衰退を避け、発展と永続性維持に何をすべきかについて大きな教訓を与える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イギリスについては鉄鋼企業について典型的な企業衰退の要因を明らかにした。また既述のクルップとダービーに関する研究内容は執筆中の書籍の一章として本年度中に出版する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
イギリスに関してはさらに繊維機械に焦点を当て豊田佐吉とイギリスのプラット家の比較により、なぜ豊田家の企業が今日まで残り、世界最大の繊維機械企業であったプラット家の企業が今日存在しないのか、の原因を昭にする。 ドイツに関してはカメラ、工作機械、重電機械、化学・薬品などの業種から事例を特定し研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内学会の出張予定が本執筆のため予定より少なかった。 著作発行に伴う自書購入代金と送料代金、国内学会出席が3件あるため。
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