2016 Fiscal Year Annual Research Report
Corporate Decline and Corporate Governance
Project/Area Number |
25380460
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
吉森 賢 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 名誉教授 (20182834)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 企業統治 / 企業衰退 / 取締役会 / 独立取締役 / 最高経営責任者 / カリスマ経営者 / 同族企業 / 日米英独仏比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では企業統治における取締役会会長と最高経営責任者の承継が企業永続性確保に果たす重要性を実証するため豊田自動織機製作所と英国Platt Brothers & C0., Ltd.の事例を比較した。両社は繊維機械企業であるがその運命は対照的であり、Platt社は第一次大戦後まで世界最大の繊維機械企業であったが1982に倒産した。これに対して豊田の二代目経営者の喜一郎は繊維機械の将来性に見切りをつけ自動車産業へ多角化し今日に至る。Platt社衰亡の最大の原因は3代目の同族所有経営が事故死した後同族による経営が非同族経営者により承継されたためである。しかしこの経営者は3代目の生前に十分の経験と訓練を得ていなかったため大戦後の不況下業績は悪化し、他社により買収され、その後倒産した。これに対して喜一郎は創業者佐吉と共に創業の苦難を共有し東大工学部で得た理論と経済情勢の洞察力により世代交代を成功させ今日に至る。この研究成果は後述論文と学会発表により公開した。Platt社に関しては日本で同社に関する書籍と他の論文を読み、不足の情報を集めるため同社のかっての所在地であった英国オルダムに出張し現地の文書図書館と本社・工場跡を訪れた。4年間の研究期間中2015年に生じたフォルクスワーゲン社の不祥事はカリスマ経営者の権力集中に起因する。このため監査役会は機能しなかった。また同社の同族所有者は対立関係にあり同族統治が機能しなかった。また同社は上場企業であったが非同族の一般株主は議決権のない優先株所有者であり、カリスマ経営者への影響力は少なかった。同族企業における企業統治と同族統治の問題解決法については2015年刊行の「ドイツ同族大企業」において提案した。今後日本においても7&I社の事例が示すようにカリスマ経営者の監督と同族統治の問題が重視される。このための有効な統治機構を本研究は提案する。
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