2015 Fiscal Year Research-status Report
経営学における「リガーvs.レリバンス」問題に対する実践的研究
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25380462
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松嶋 登 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (10347263)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有用性 / 厳密性 / 情報技術 / 構築主義 / 情報化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果としては、研究テーマに関わる単著『現場の情報化:IT利用実践の組織論的研究』(有斐閣)と、より発展的な課題に取り組んだ編著『制度的企業家』(ナカニシヤ書店)を上梓したことがあげられる。 『現場の情報化』は、情報経営学(AIS: Academic Information Systems)における「リガーvs.レリバンス」論争を著書全体の問題意識として位置づけ、技術と組織の超越性と相互参照を通じた実践を、技術決定論的な立場から解明する学問的アイデンティティを定め、情報経営学における論争を批判的に整理するとともに、新たな視座として求められる物質性概念を定めてきた。情報経営学は、社会学者ギデンズの構造化理論や科学社会学のアクターネットワーク理論など、古くから新しい社会理論ないし思想を取り入れてきた経緯があるが、物質性概念については量子物理学者であり、批判的実在論者であるカレン・バラッドを参照した社会物質性概念が位置づけられる。今後は、この社会物質性概念の理論的深耕が課題になろう。 『制度的企業家』は、同じく超越的な社会的事物としての概念化が求められる概念であるが、制度論においても、近年の制度ロジックをめぐる議論において物質性概念が取り上げられており、情報経営学とは別の理論的視点からの検討を行ってきた。すでに編著以降でも、物質性概念それ自体を深く掘り下げた論考を発表してきたが、制度論以外にも物質性に注目した論考を集めた研究業績を発表していくことが今後の課題になろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の集大成となる著書を最終年度を待たずして公刊することができた。 ただし、研究を通じて新たに見出された課題として、物質性概念の理論的深耕がある。この課題には、理論的なアプローチはもちろん、当初予定していなかった経験的調査も必要になると考えられる。残る研究期間では、当初の研究計画を超えて、より発展的な課題に挑戦していかなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
物質性概念の理論的アプローチについては、実在論をめぐる哲学的な論争の整理が必要であると考えている。具体的には、科学哲学を担ってきた物理学者の実在論について、存在論と認識論の区分を超えた位置づけが必要になっている。また、経営学研究の哲学的な整理として最も参照されてきたBurellの議論についても、今年度の7月にはおよそ30年ぶりのセカンドエディションが発刊予定であり、また、発展的な議論もすでに行われており、そうした思想を整理することが必要になると考えられる。 これらの研究を推進するために、関連する研究テーマを追求している若手研究者や大学院生との共同研究を行っていく。
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Causes of Carryover |
研究書の出版にかかわる研究が主となり、学会報告等の機会が多くなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
出版した研究書に関する報告のための旅費が必要となり、またより発展的な経験的研究に着手するための物品費及び旅費が必要となる。
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Research Products
(5 results)