2016 Fiscal Year Research-status Report
経営学における「リガーvs.レリバンス」問題に対する実践的研究
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25380462
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松嶋 登 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (10347263)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 科学的厳密性 / 実践的適切性 / アクター・ネットワーク理論 / 制度派組織論 / 計算実践 / 制度ロジックス |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度に計画されていた研究目的は、2015年に出版した研究書『現場の情報化』によるa) AIS領域での包括的なリガーVSレリバンス論争に関する研究をより発展させるために、b) AIS以外の研究領域においてなされた同種の議論との比較検討とともに、c) 背景となった経営学の研究方法論に対する学説史的検討を行うことにあった。 この目的のために、本年度は、b)アクター・ネットワーク理論および制度派組織論を取り上げ、c)企業経営の根幹となる計算実践を検討してきた。具体的な研究成果としては、國部克彦および澤邉紀生との共編『計算と経営実践:経営学と会計学の邂逅』(有斐閣)を出版した。本編著の出自は、2011年7月に開催された日本情報経営学会第62回全国大会における課題研究セッション「計算空間のアレンジメント」および2013年秋に発刊された『日本情報経営学会誌』Vol. 33, No. 4に遡ることができるが、制度ロジックスの方法論など改めて書き下ろした論文を追加しつつ、基礎論の発表済み論文についても抜本的な改訂を行うために定期的な研究会を開催し、執筆者らと綿密なディスカッションを重ねた成果である。 また、日本経営学会および経営学史学会の統一論題の論者として、これまでに本研究事業として推進してきたb) およびc) に関する研究成果を報告する機会に恵まれた。加えて、2015年に出版した研究書である『現場の情報化』(有斐閣)に対しては、2016年5月に経営学史学会賞著書部門を受賞したことも、c) 経営学の研究方法論を深耕する学説史的検討の成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に照らせば概ね順調に進展しており、新たな編著を出版したことなどは、当初の計画以上に進展しているとも言える。ただし、昨年度の研究を通じて新たに見出された課題である、社会物質製の理論的深耕および経験的な調査研究については、既に着手してきたものの、具体的な研究成果として発表するまでには至っていない。その意味においては、当初の計画以上に進展しているとは言えず、最終年度に当たる来年度にむけた課題になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる2017年度の研究については、新たに見出された課題である社会物質性概念の理論的研究の深耕と経験的研究の推進および研究成果の発信を行っていく必要がある。そのために今後は、研究代表者単独の議論だけではなく、研究代表者が指導する大学院生や、新たな研究協力者との共同研究を推進していく必要もあるであろう。また、研究成果の発信のためには、学術論文の公刊はもちろんであるが、それ以上に学会等のワークショップで報告の機会を持つなど、精力的に研究成果の発信にむけた取り組みが必要である。
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Causes of Carryover |
2016年度の実績としてあげられている編著の執筆に際しては、共著者および編著への寄稿者との議論を行う研究会を中心に活動してきたが、研究会の開催は神戸大学で行うことがほとんどであって、研究費の支出に繋がらなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度には、ワークショップの開催や調査旅費および学会出張にかかる経費が見込まれている。また、本研究課題に対する研究協力者や同じ研究テーマで研究指導している大学院生の旅費なども必要になる。
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Research Products
(4 results)