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2014 Fiscal Year Research-status Report

個人と集団のリスク評価の比較に関する実験研究

Research Project

Project/Area Number 25380472
Research InstitutionTokyo Metropolitan University

Principal Investigator

長瀬 勝彦  首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (70237519)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2017-03-31
Keywords自己楽観バイアス / 時間割引 / 社会的比較判断 / リスク / 意思決定 / 自己と他者
Outline of Annual Research Achievements

人はネガティブなイベントについては自分は他人よりも遭遇しくいだろうと考え,逆にポジティブなイベントについては自分は他人よりも遭遇しやすいだろうと考える傾向がある。この現象は自己楽観バイアス(comparative optimism)と呼ばれ,社会的比較判断(social comparative judgment)に分類される現象の中で,自分の能力や容姿等が平均以上であると認識する「平均以上効果」(above-average effect)と並んで最も頑健な現象である。また人は将来のイベントについて,それが現在発生した場合よりもそのインパクトを割り引いて知覚することが知られている。これは時間割引(time discount)と呼ばれる現象である。自己楽観バイアスと時間割引の両者にまたがった研究としては,時間割引の度合いと確率の低いポジティブまたはネガティブなイベントの発生確率の見積もりとの関連を調べた先行研究はいくらかみられる。しかし,イベントが自分に発生する確率を見積もる場合と一般的な他者に発生する確率を見積もる場合とを区別した研究はあまり見当たらない。本稿では両者を区別しならが時間割引の度合いとの関係について探索的な実験をおこなった。結果は,自己楽観バイアスについては,ネガティブなイベントについては自己楽観バイアスとは逆の傾向がみられ,ポジティブなイベントについては自己楽観バイアスの傾向があったが,いずれも統計的に有意な差は認められなかった。リスク評価と時間割引との関係については,他者条件の事故に遭う確率の見積もりに関してのみ有意差があり,時間割引率の大きい回答者ほど他者であるSさんが事故に遭う確率を小さく見積もっていた。しかしこの条件だけで有意差が出たことについての説得力のある解釈は見出しがたく,今後の更なる取り組みが必要とされる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

研究が計画よりもやや遅れた原因は,ひとつにはなかなか仮説通りの実験結果が得られなかった点にある。いくつかおこなった実験の中で仮説通りの有意差が得られたのは一部に留まる。ただし一般に,仮説通りの結果が得られなかったことをもって直ちにその実験の価値が否定されるわけではない。かの発明王トーマス・エジソンは,白熱電球のフィラメント探しの過程で膨大な試行錯誤をおこなったが,それは失敗ではなくうまくいかない方法をたくさん見つけたのだと語ったという。それにならえば今は試行錯誤の時期であるといえるだろう。

Strategy for Future Research Activity

第一に,いまいちど先行研究のレビューに立ち帰って関連研究を丹念に分析したい。主なトピックには,リスクの社会的増幅,フィードバックと意思決定,リスク感情仮説,経験による意思決定とリスク評価の関係,集団の人数とリスク選好の関係,報酬のコンテクストとリスク意思決定との関係などがある。第二に,仮説を改訂しながら実験を繰り返していきたい。現在計画中の実験としては,かつてわれわれが発見した「お手盛りシフト」について条件をやや変更して発生条件をさらに探求する実験などがある。

Causes of Carryover

実験の参加者への謝金を支出する予定であったが,今年度中におこなった実験はすべて研究代表者の大学での授業内で受講生を参加者としておこなうことでまかなえたために支出がなされなかった。このことが支出が予定金額を下回った最大の理由である。

Expenditure Plan for Carryover Budget

今年度おこなった実験のように短く単純な質問票に回答を求める形式の実験であれば,授業内におこなった方が参加者の回答へのモチベーションの点でも大勢の参加者を確保する点でも優れており,諸外国の研究者も同様の取り組みをしている。しかしながら次年度は,より長く参加者を拘束する実験をおこなう計画があり,謝金の支払いがおこなわれる予定である。

  • Research Products

    (3 results)

All 2015

All Journal Article (1 results) Presentation (1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 自己楽観バイアスと時間割引2015

    • Author(s)
      長瀬勝彦
    • Journal Title

      首都大学東京大学院社会科学研究科経営学専攻リサーチペーパーシリーズ

      Volume: 148 Pages: 1-12

  • [Presentation] 心理学は経済学から何が学べるのか2015

    • Author(s)
      長瀬勝彦
    • Organizer
      産業・組織心理学会部門別研究会
    • Place of Presentation
      筑波大学社会人大学院キャンパス(東京都・文京区)
    • Year and Date
      2015-03-07
  • [Book] 人材開発白書20152015

    • Author(s)
      富士ゼロックス総合教育研究所,岩井睦雄,川口淳一郎,長瀬勝彦
    • Total Pages
      54(52-53)
    • Publisher
      富士ゼロックス総合教育研究所

URL: 

Published: 2016-05-27  

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