2016 Fiscal Year Research-status Report
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25380472
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
長瀬 勝彦 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (70237519)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リスク認知 / 意思決定 / 集団 |
Outline of Annual Research Achievements |
個人と集団との間に予測における楽観の度合いに差があるかどうかをみる実験をおこなった。参加者を二人ずつ組ませて,互いに議論して合意した予測時間を回答する群と,議論せずにおのおのの予測を個別に回答する群を設定し,共同で13文字の回文を作成するのに要する時間を見積もらせた。結果は両者の回答の間には有意差は見られなかった。議論することによって予測が個人予測よりも楽観もしくは悲観に傾くような現象は起こらなかったといえる。 集団でとる行動について,その集団が自分たちである場合と他人である場合では楽観度に差があるかどうかをみる実験をおこなった。二人で共同でオークションに出品された品をいくらなら落札できると予想するかを,自分たち二人が入札するという条件で回答する群と,自分たちとは別の二人が入札するという条件で回答する群が設定された。結果は,自分たち条件(自集団)のほうが他人条件(他集団)よりも有意に高い金額を予想した。自分たち条件の方が他人条件よりもやや悲観的であると解釈することが可能かもしれない。 地震のリスクについて感情評価(恐怖の度合い)と分析評価(遭遇確率と身体的被害に遭う確率)をおこなうに当たって,その順番が評価に影響するかどうかをみる実験をおこなった。感情評価を先にして分析評価を後にするという条件と,逆に分析評価を先にして感情評価を後にするという条件との回答を比較したところ,前者の回答の方が後者の回答よりも恐怖の度合いが有意に高く評価された。ただし男女別に分析すると,女性はその傾向が顕著であるが男性は有意なほどの差ではなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗がやや遅れている最大の原因は,実験結果が必ずしも仮説を支持しなかったためである。個人と集団との間に予測における楽観の度合いに差があるかどうかをみる実験においては,本研究に関連する「選択シフト」についての一連の先行研究から,個人回答と共同回答との間に差が生ずる可能性もあると予想されたが,まったく差が無かった。集団でとる行動について,その集団が自分たちの場合と他人の場合では楽観度に差があるかどうかをみる実験については,関連する個人レベルの先行研究では,自分についての予測が他人についての予測よりも楽観的である可能性が示唆されていたが,結果はむしろ逆に自集団条件の方が他集団条件よりも悲観的と解釈できるものであった。地震リスクの感情評価と分析評価との関係についても,今回得られたような男女差が見出されることは必ずしも予測されていなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにおこなった実験の結果を整合的に説明できるように文献レビューを追加しながら考察を深めたい。これまでの実験から,自集団条件の方が他集団条件よりも悲観的であるらしいことや,女性が災害リスクについて先に感情評価をしてそのあとに分析評価をすると,その逆の場合よりも恐怖の度合いを高く評価するのに対して,男性はそのような差が見られないことなどが見出された。これらは発見事実としては興味深いものであるので,筋道だった説明ができれば学術上の貢献となることが期待される。そして必要に応じて仮説を修正して追加的な実験もいくつか実施したい。
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Causes of Carryover |
何度かおこなった実験について,謝金を必要としないやりかたをとることができたために謝金の支出がなかった。また,実験結果が予想と異なるものであったために学会報告等の出張旅費の支出が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
謝金を支出する形での実験も必要であるため,精力的に実験をおこなうこととしたい。具体的には,数十名の参加者と数名の補助者を要する実験を数度にわたっておこないたい。参加者が60名,補助者が5名の実験の場合,参加者および補助者への謝金が2千円とすると,1回の実験につき費用は13万円となる。これを数回おこなうと,おおむね次年度使用額に見合う金額になる。
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Research Products
(1 results)