2017 Fiscal Year Annual Research Report
Risk evaluation of individuals and groups
Project/Area Number |
25380472
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
長瀬 勝彦 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (70237519)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リスク / 意思決定 / 個人と集団 |
Outline of Annual Research Achievements |
Slovic et al.(2004)などによって,人間のリスク評価には感情的な評価と分析的な評価の2つがあり,前者は直観的なシステム1が,後者は分析的なシステム2が担っていることが議論されてきた。長瀬(2002)では,リスクには「いま,そこにある」リスクと,現在は起こっていないけれども長期においては起こる可能性がある自己にとって不利なイベントのリスクの2つに分類でき,前者はシステム1が,後者はシステム2が主として対応していることが示唆された。以上に立脚し,長瀬(2017)では,リスクの感情評価と分析評価との関係について心理実験によって探求したが,残された課題があった。それらを受けて,リスクの感情評価と,分析評価のひとつとしての確率評価との関係について心理実験をおこなった。大学生226名が,感情先群112名と確率先群114名にランダムに振り分けられ,質問紙に回答した。いずれの群の質問紙にも,地震で被害を受けることに対する恐怖の度合いについての質問(10段階のどれにあたるかを回答)と,地震で身体的被害を受ける確率の見積もりについての質問(パーセントで回答)の2つが記載されていた。ただし,感情先群の質問紙には恐怖の度合いを尋ねる質問が先に記載され,確率先群の質問紙には被害を受ける確率についての質問が先に記載されていた。結果は,恐怖の度合いについては確率先群の方が感情先群よりも有意に恐怖の度合いを低く回答した(p<.001)。先に分析的に評価することで感情があまり高ぶらなかったと考えられる。また確率の見積もりについては,感情先群のほうが確率先群よりも有意に高く回答した(p<.01)。先に恐怖の度合いを考えることで感情が喚起され,それが影響して確率を高く評価したと考えられる。ただしいずれにおいても女性の方が男性よりも感情評価と分析評価の順序の影響が小さいことが示唆された。
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