2015 Fiscal Year Research-status Report
循環型サプライチェーンにおける情報共有とリードタイムの影響
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25380475
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
細田 高道 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (50570123)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 循環型サプライチェーン / サプライチェーンマネジメント / リサイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は使用済み製品の市場からの回収から再生までのプロセスを考慮した循環型サプライチェーンにおけるシステム全体の効率化手法について主に数理モデルを活用して考察するものである。数理モデル化において最大の障害になるであろうと想定していたランダムな歩留りの数理モデル化が比較的短期間で克服できたこともあり、今年度はその成果をEuropean Journal of Operational Research から出版することができた。主な研究成果は以下の点に要約できる。 1.van der Laan, Salomon, Dekker and van Wassenhove (1999)及び Inderfurth and van der Laan (2001)において報告されていた、いわゆるリードタイムのパラドックスが、それら既往の研究が想定していた状況とは異なる場合においても発生しうることを示した。リードタイムのパラドックスとは、循環型サプライチェーンに固有の現象であり、回収のリードタイムが長いほど完成品在庫のコストが小さくなるというものである。一般に、通常のサプライチェーンではその逆の現象、つまりリードタイムが短いほど完成品在庫コストは小さくなる、が定説である。 2.ランダムな回収量に対して独立した分布を持つランダムな歩留りを想定した場合のアウトプット量の分散を定式化した。歩留りの分布は特定の分布に依存せず、一様分布、三角分布、ベータ分布などが使うことができる。分散を定式化したことにより、在庫コストへの影響を数理的に解析することが可能となった。 3. 数理的解析の結果、製造と再生のリードタイムを同じにすることが、循環サプライチェーンにおける完成品在庫のコストを最小化することが判明した。 4. 回収量を増加させるとコストが増加する可能性があることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの成果は国際的な学術誌に受理され出版されるなど、一定の評価を得ている。しかしながら、それら成果を出す過程において新たな課題が見えてきたことも事実である。その一つに、需要と回収のプロセスをどうモデル化するか、がある。循環サプライチェーンの分野において、需要と回収のプロセスは相互に相関はありがならも、自己相関はないとするホワイトノイズプロセスと仮定することが通常であり広く受け入れられている。本研究でもそのようにしている。しかしながら、より現実に近いのは自己相関をも考慮したVARモデルと呼ばれるモデルで需要と回収を表現することであり、この方向性については国際会議等でも指摘を受けたことがある。 VARモデルの活用については、当初は計画していなかった内容であり、また、VARモデルの循環型サプライチェーンへの応用事例は全くないことからも推察できるように、非常に高度なモデル構築能力が求められる。VARモデルの採用は、より現実的で新規性のある発見につながる可能性もあることから、新たに挑戦するに値する課題と考える。 目標を当初予定より高いレベルに再設定したことにより、本研究の現在までの進捗状況は「やや遅れいている」とすることが妥当であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度はVARモデルを需要と回収のプロセスに応用した循環サプライチェーンモデルを構築することを最大の目的とする。研究体制については、研究協力者として英国と米国の研究者から協力を得ることを予定している。成果発表については、国際学会での発表を2回と英文学術誌への投稿を予定している。 今後のスケジュール概要は、1)5月中をめどに、VARモデルの応用について基礎的な検討を終える、2)5月から6月にかけて数値的な検討を行い、執筆する論文の骨子を固める、3)7月から論文執筆開始、4)9月には国際的な学術誌への投稿を完了、5)9月以降、年度末までの間に国際学会での発表を行う、を予定している。
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Causes of Carryover |
当初予定では国際学会への参加に伴う参加費や旅費を予算化していた。しかしながら、結果として国際学会への参加が2015年度においてはできなかったことにより、次年度使用額が生じた。国際学会への参加ができなかった主な理由は、研究途中において新たな課題としてVARモデルの導入を試みていたことにより、時間的余裕がなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度は当初予定の最終年度であった為、補助事業期間の延長を申請し承認された。これにより2016年度においてここで発生した次年度使用額を使用することになる。 2016年度における研究成果を国際学会にて複数回発表し、さらに学術誌に投稿することを予定しており、これらの発表に伴う経費として使用する予定である。
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