2013 Fiscal Year Research-status Report
ゼロレバレッジ企業の特性とリーマンショック後の行動変化
Project/Area Number |
25380483
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
高見 茂雄 立正大学, 経営学部, 教授 (50345550)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ゼロレバレッジ / リーマンショック / 財務制約度 / 借入余力 / エージェンシーコスト / 経営成果 / ゼロレバレッジ継続 / 4種ゼロレバレッジカテゴリー |
Research Abstract |
研究計画初年度は「データベースの構築と回帰分析手法の見通しをつける」を目標に定めた。前者では上場企業10業種1999年3月期からリーマンショック期2009年3月期までのデータを整備し,短期借入(単名,手形割引,コミットメントライン,CP)と長期借入(長期借入金,社債,CB・WB)からなる負債科目ごとに特性を分析した。その結果,短期借入は単名が圧倒的なシェアを占めるが減少傾向にあり,リーマンショックにおいて大企業グループで社債から長期借入金へのシフトが確認できた (文献[1])。 後者ではゼロレバレッジ選択を決定づける説明変数の分散分析を行った。トービンのQ,研究開発費,資本的支出,外国人株主比率,金融機関持株比率,配当性向,社齢などで有意であり,先行研究とほぼ合致した(文献[2])。 つぎに,これら説明変数を用いて,ロジスティック回帰分析を行ったが,日本においてはむしろゼロレバレッジ状態になりにくいという研究計画とは逆説的なインプリケーションが得られた。 一方,ゼロレバレッジ状態が経営成果に及ぼす影響につき,ゼロレバレッジ選択は短期的には支払利息や金融機関交渉コストの低減などからROAは向上するが,ゼロレバレッジ状態が継続することで長期的にはエージェンシーコスト増大を通じてむしろ低下するというインプリケーションが得られた(文献[3])。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究「ゼロレバレッジ企業の特性とリーマンショック後の行動変化」は下記の研究目的を掲げている。「ゼロレバレッジ(無借金)企業は金融機関や資本市場との関係を断絶した点で,実質無借金企業とは異なる。本研究は2000年以降の上場日本企業を対象に,手形割引,コミットメントライン,リース等オフバランス項目資金調達手段からも断絶した企業の特性を調査する。その上で,資本市場や金融機関の状況や財務制約などの諸要因がいかに無借金に駆りたて,逆に再度借入れを起こさせたかを解明する。さらに,リーマンショックの構造変化を受け,ゼロレバレッジ企業はいかに行動を変化させたかを明らかにし,「関係断絶か保持か」の財務戦略を考案する。」 まず,研究の初段階としてオフバランス項目も含めたデータ整備に関しては十分達成できた。つぎに,「諸要因がいかに無借金に駆り立て,再度借入を起こさせたか」については回帰分析を計画していたが,むしろ日本上場企業ではゼロレバレッジは例外的な事例で,リーマンショック期においても金融機関との結びつきは強固であるとのインプリケーションが得られており,諸外国を対象とする先行研究とは異なる定性的アプローチが必要となっている。そのため研究方向を若干変更する。 一方,ゼロレバレッジの成果指標に与える影響については先取りして進んでいる。 「リーマンショックの構造変化を受け,ゼロレバレッジ企業はいかに行動を変化させたか」と財務戦略については未着手である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初定めたとおり,「研究計画(平成26~27年度)は回帰分析手法を固め,年度経過とともに新しく追加されるデータとこれまでの分析結果との整合性を検討する」を進めて行く。 まず,データベースをリーマンショック期(2009年3月期)を間にとった,2004年3月期から2014年3月期まで時期にデータベースの洗い替えを行う。つぎに,当初の想定とは異なる「むしろ日本上場企業ではゼロレバレッジは例外的な事例で,リーマンショック期においても金融機関との結びつきは強固である」を導く仮説を立て,回帰モデルで検証することが今後の大きな課題となる。調べた限りでは,上場企業においてはメーンバンク制や持株関係がいまだに強固であること,財務制約度の高い企業ほどレバレッジを続ける傾向にあること,ゼロレバレッジ誘因は投資機会の増大よりも企業属性に依存することが明らかになっており,今後はこれらを組み入れたモデルを構築し,リーマンショック期以降の展開を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究していた研究補助672千円の予定は次年度以降に伸びたため。一方研究図書は計上した以上使用した。 おもにデータベース作成などで研究補助人件費がかかる予定である。
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Research Products
(4 results)