2014 Fiscal Year Research-status Report
経済性と社会性の同時実現を図るBOPビジネスの理論的・実証的研究
Project/Area Number |
25380520
|
Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
菅原 秀幸 北海学園大学, 経営学部, 教授 (30255418)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | BOP |
Outline of Annual Research Achievements |
経済性と社会性を同時に追求するBOPビジネスについて理論的、実証的に研究することが本研究の目的である。これまでの2年間において、実践的視点からBOPビジネスの成功要因を探ることをすすめ、おおむね当初の目的を達成した。理論的な検討については、いまだ研究途上であり、27年度での主たる研究課題となる。
すでに成功している世界の111事例の分析から成功のモデルを抽出した。それらを図示化することによって、15のモデルに分類が可能となった。さらに成功モデルの分析から、3つの理論的示唆を得た。これら成功モデルと理論的示唆を、日本企業が事業計画策定の際に取り込むことによって、事業計画の熟度が高まり、成功の可能性が高くなる。これまで多くの日本企業は、製品の性能や品質を重視する傾向が強い一方で、ビジネスモデルの構築にはそれほど注力してこなかった。しかし、BOPビジネスの成功には、すぐれた製品・サービスに加えて、斬新なビジネスモデルが不可欠となる。
BOPビジネスに関心を示す日本企業の数はかなり増えてきており、潜在的事業数は400~500事業に達すると推計される 。しかし成功といえる事業の数は、ごく限られており、多くは苦戦を強いられている。日本企業が海外市場でこれまで蓄積してきた成功体験が、BOP市場ではまったく通用しないからだ。一方、世界には、すでに数多くの成功事例が存在する。その分析から明らかになったBOPビジネスを成功に導く15のモデルは、いわばBOPビジネスの定石だ。この定石をおさえずに、やみくもに挑戦しても成功はおぼつかない。日本企業が定石に学び、それを事業計画策定に取り込むことによって、成功の可能性は格段と高まる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年3月に中東およびインド・スリランカ地域でのフィールド・ワークを集中的に実施する予定していたが、イスラム国問題発生により、安全面での危惧が生じたために、本計画を中止。実際に、現地へを直接訪問することが出来なかったために、日本国内でのインタビュー調査に限定された。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で以下の3つの理論的示唆を得られた。これらに基づいた実証研究を進める。 (1)企業の利益とBOP社会の利益を同時に実現している。これは、PorterがCSV(Creating Shared Value: 共有価値の創造)とよんだものを(Poter, 2011)、BOP社会で実現するということだ。15モデルのそれぞれにおいて、経済的利点と社会的利点が明らかになっており、まさに企業の利益とBOP社会の利益が同時に実現されている。 (2)これまで手を組んだことのない相手(現地政府、現地企業、国際機関、NGO、BOP層の人々)とパートナーシップを組んで、斬新なビジネスモデルを創り出している。日本企業は、これまで自己完結型ビジネスモデルを志向してきたために、この種のパートーナーシップには不慣れであり、経験の蓄積がほとんどない。この点において先行する欧米企業に大きく後れを取っている。 (3)BOPビジネスの本質は、「非連続性」にある。従来のビジネスプランや戦略は通用せず、未知の状況の中でまったく新しいビジネスをゼロから創っていかなければならない。先進国市場をターゲットとしてきたこれまでのビジネスはまったく通用しない。非連続性を乗り越えられる人材の育成を十分にしてこなかった日本企業にとっては、大きな課題となっている。
|
Causes of Carryover |
イスラム国問題の発生により当初予定していた中東・東アジアでのフィールドワークを中止したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
国内調査に比重を置くとともに、治安上の問題の発生が予想されない地域を選択してフィールド調査を実施する。
|