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2013 Fiscal Year Research-status Report

組織進化のダイナミクスに関するSAPの枠組みを用いた実証的研究

Research Project

Project/Area Number 25380541
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionMeiji University

Principal Investigator

小林 一  明治大学, 商学部, 教授 (00205478)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2016-03-31
Keywords実践としての戦略(SAP) / 居住モードと建築モード / 組織学習 / ダイナミックケイパビリティ / 実践理論
Research Abstract

平成25年度はSAP研究の枠組みを精緻化するための理論研究と理論枠組みに依拠した実証研究の2つを並行して行った。従来、SAPの枠組みでは戦略が組織において策定されるプロセスをプラクティショナー(実践家)、プラクティス(実践慣行)、プラクシス(個々具体的な実践行為)という3つのPの交錯関係として説明しようとしてきた。しかし、一口に交錯関係と言っても、どのようなダイナミックな相互作用関係が3つのPの間に見られるのかは必ずしも明らかではなかった。そこで、ハイデッガー流の現象学的視点から、相互作用関係のパターンを類型化して考えることにした。それが建築モード(building mode)と居住モード(dwelling mode)という分類である。
我々は新築の家を建設するときには、家の間取りなどが非常に気になる。家に住み込む前は家が自分から切り離され、客観視されているからである。これが建築モードである。ところが、新築の家に引っ越し、生活するようになると、家と自分自身とが一体化してくる。これが居住モードであり、日常世界は普通、居住モードに支配され、見慣れた風景になると、家にさしたる関心を抱くこともなくなるのである。
以上がハイデッガー流の実践の世界観であるが、これが組織進化のダイナミクスの理解にどう貢献するのかというと、既存の戦略論は、いわば建築モードを想定して、議論を展開してきたということである。多くの競争戦略論のテキストが描いている世界は建築モードに該当している。これに対して、SAPが重視するのは、居住モードの世界を前提とした戦略の形成プロセスである。今年度は居住モードの世界観に基づく戦略形成プロセスが現実の企業の現場でどのように展開されているのかを経験的に検証するために、関東を中心に多店舗展開している中堅のスーパーマーケットを対象にデプスインタビューに基づいて事例研究を行った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

一口にSAP研究といっても、その方法論的基盤は様々である。事実上、研究者間で合意された有効な理論枠組みは今のところ存在していない。初年度である平成25年度は、事前に特定の理論枠組みを想定するのではなくて、実際の企業の事例研究を実証的に進めて、そこで見出された発見物から帰納的に説明力のある理論枠組みの候補を探し出すことにしたのである。
既存の実証的なSAP研究から様々な分析のための理論枠組みを選び出し、独自に行った事例研究から得られた経験的発見物とその枠組みを照らし合わせて、説明力の高い枠組みの模索が目標とされた。結果として、事例研究から、居住と建築という戦略化のモードの存在がほぼ確認され、ハイデッガー流の実践理論の枠組みの有効性がある程度、確かめられた。
ただ、それと共に、この枠組みのもつ問題点も次第に明らかになってきた。ハイデッガー流の枠組みで一番曖昧な点は、現実の事象の多くは単純には居住と建築の2つに区分できないということである。事例研究でわかったことであるが、居住と建築の間の中間的なモードとして、準居住モードとでも呼ぶことのできる経験的事象が多数見られた。次年度では、さらに多くの事例研究を実証的に積み重ね、この枠組みの修正と拡張を行う段階に至ったといえる。居住モードと建築モードの行き来がどのようなメカニズムを通じて達成されているのかを組織学習と実践理論の知見を援用して詳細に解き明かしていく。

Strategy for Future Research Activity

平成26年度(2014年度)においては、海外学会での研究成果の発表と日本語論文ならびに海外研究者との英語の共同論文の執筆を研究の中心に据えていく。海外学会については、現在、秋の学会発表に向けて2つのショート・ペーパーを投稿済みであり、現在、その許諾の返事を待っている。これにより、海外への研究成果の情報発信をさらに進めていく。また、夏休み中に、日本語でのSAP論文の執筆と英語による共同論文の作成を行う予定であり、すでに少しずつ内容の構想を固めている。
前者の日本語論文は、事例研究を通じて得られたデータをSAP(居住モードと建築モード)の枠組みを通して整理することで、日本的なダイナミックケイパビリティのあり方が見えてくるのではないかとの想定から執筆を進める予定である。
後者の英語の共同論文のテーマは日本的なマーケティング現象・消費現象の特異性を解明するというものであり、SAP研究の基礎にある実践理論のアイディアを応用して現象の内実にアプローチしていく予定である。SAP研究は、企業の内部の戦略形成プロセスに目を向けることが多いが、実践理論はよりマクロの社会現象のダイナミクスを理解する際にも有用であると考えている。なお、この研究プロジェクト全体には10数名の日本並びに欧米の研究者が参加しており、その成果は日本を舞台にした批判的マーケティング・消費研究の最初の英語の論文集としてイギリスの出版社から公刊される予定である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成25年度に使い切れなかった未使用金額が発生した主な理由は2003年度末に予定していたアメリカのロードアイランド大学ニクリッシュ・ドラキア教授の招聘に伴う費用支出が不要になったためである。当初、科研費による旅費等の支出を予定していたが、国際交流に関わる特別の助成金を明治大学から単年度ながら獲得することができたため、当該支出が不要になった。
人的な国際交流にかかわる大学からの費用助成は単年度に限定されたものであり、本年度は当該助成金額を得ることはできない。そのため、科研費の中から海外研究者の招聘費用をまかなう予定であり、未使用額はそれに充当しようと考えている。2014年度末(2015年3月)に共同研究の進捗状況の最終確認のためにアメリカからドラキア教授を再度本学に招くことがすでに決定しており、それに伴う経費として使用する。

  • Research Products

    (3 results)

All 2014 2013

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] 両手利き組織研究のミクロ基礎2014

    • Author(s)
      小林 一、滝本(金井)優枝
    • Journal Title

      明大商学論叢

      Volume: 96 Pages: pp.1-19

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] Making and Consuming Characters2013

    • Author(s)
      Takimoto, Masae, Yoritoshi Hara, Hajime Kobayashi, and Masaaki
    • Organizer
      The 2nd Multidiciplinarity in Business and Science Conference
    • Place of Presentation
      Dubrovnik, Croatia
    • Year and Date
      20131010-20131012
  • [Presentation] Ambidextrous Organizational Learning and Enacted Strategy Stuff: Combining the Strategy-as-Practice View and Dynamic Capability View2013

    • Author(s)
      Kobayashi, Hajime, Masae Takimoto, Yoritoshi Hara, and Masaaki Takemura
    • Organizer
      The 29th Conference of European Group for Organizational Studies
    • Place of Presentation
      HEC Montreal, Canada
    • Year and Date
      20130704-20130706

URL: 

Published: 2015-05-28  

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