2013 Fiscal Year Research-status Report
サンフランシスコ市の商店街活性化:協働型計画の役割に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
25380570
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
畢 滔滔 立正大学, 経営学部, 准教授 (70331585)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 協働型計画 / 商店街活性化 / まちづくり / 都市観光 |
Research Abstract |
本研究の目的は、協働型計画の先駆け的都市であり、かつ衰退した商店街の再生に成功したアメリカのサンフランシスコ市に関する事例研究を行い、商店街の活性化に関連する多様な政策の策定方法と効果を体系的に分析した上で、商店街の活性化に、協働型計画が果たす役割を理論化することである。 平成25年度は、サンフランシスコ市の5つの政策、すなわち(1)都市再開発、(2)中小企業振興、(3)交通、(4)震災復興、および(5)チェーン店規制条例について調査を行った。研究の結果は3点にまとめることができる。 第1に、サンフランシスコ市の商店街再生のカギは、市民の草の根運動と商人の努力である。1970年代後半以降、荒廃した同市の商店街が再生を遂げた理由は、良い環境に恵まれたことでもなければ、連邦・州・市当局が特別に支援策を打ち出したことでもない。市民の草の根運動と、進取の精神に富む中小商人の努力こそが、商店街の再生をもたらしたのである。 第2に、サンフランシスコ市当局は、商店街再生の担い手である起業家を引きつけるために、補助金をほとんど提供していない。同市が起業家を引きつける最大の魅力は、異文化・異なるライフスタイルに寛容である同市の特徴と、まちづくりへの市民参加の機会である。 第3に、サンフランシスコ市の経験は、日本の商店街の再活性化に重要な示唆を与える。日本の商店街を再生させるためには人々を都市部住宅地に呼び戻すことが不可欠である。また、商人の努力を喚起するためには、競争が機能する小売市場を維持する必要がある。さらに、活性化政策の策定方法は、従来のトップダウンの方法から、商業者、地権者、住民などを巻き込んだ協働型計画に転換しなければならない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、アメリカのサンフランシスコ市に関する事例研究を行い、商店街の活性化に、協働型計画が果たす役割を理論化することである。平成25年度には実態調査と理論研究を計画した。以下の3つの理由から、本研究はおおむね順調に進展していると自己評価する。 第1に、実態調査を計画通り遂行した。実態調査の主な課題は、サンフランシスコ市の商店街の活性化に関連する政策、さらに各政策の策定のプロセスと効果を明らかにすることである。そのために、平成25年度に、サンフランシスコ市にて現地調査を行い、商店街の関係者に対するインタビュー調査に加えて、アーカイブ、新聞・雑誌記事、歴史写真などの文章資料を収集した。 第2に、理論研究を計画通り遂行した。理論構築の主な課題は、トップダウンの意思決定の問題と、協働型計画の必要性を理論的に整理することである。平成25年度に、協働型計画、アメリカの都市計画史などの文献をレビューし、政策の策定方法と商店街活性化の関係を理論的に検討した。 第3に、研究の結果を、研究書および査読付き英文論文として公表した。本研究の結果として、平成26年2月に『よみがえる商店街:アメリカ・サンフランシスコ市の経験』(碩学舎)が出版され、3月に、論文“Rebuilding a blighted port into a recreational and tourism-friendly waterfront: the post-earthquake recovery of the Port of San Francisco," Journal of Global Scholars of Marketing Science: Bridging Asia and the World, 24(2), pp. 148-159が刊行された。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を通じて、サンフランシスコ市の商店街の活性化に影響を及ぼした政策について、6つの政策、すなわち(1)都市再開発、(2)中小企業振興、(3)交通、(4)震災復興、(5)チェーン店規制条例、および(6)観光振興政策が重要である、ということを明らかにした。平成25年度では、(1)~(5)の政策の策定方法と効果について調査を行った。今後の研究では、(6)観光振興政策が商店街活性化に与えた影響に重点を置き、実態調査と理論研究を行う。 実態調査では、サンフランシスコ市の観光振興政策について、協働型計画が導入された背景、運用の方法、および政策が商店街の活性化に与えた影響を明らかにする。主にサンフランシスコ市現地にて2つのデータ収集作業を行う。ひとつは、同市の観光促進団体の担当者、観光客に人気の高いエスニック近隣地区の商人連合会の役員と商人に対するインタビュー調査を実施する、という作業である。もうひとつは、関連するアーカイブ、新聞・雑誌記事、文献などの文章資料を収集する作業である。 理論研究では、協働型計画、都市観光、文化ツーリズム、コミュニティ開発に関する文献をレビューし、観光政策の策定方法が商店街の発展に与える影響を理論的に整理する。先行研究で指摘されたように、都市の観光産業が地域コミュニティの発展、さらに都市経済に真に貢献するためには、開発される観光プロジェクトは観光客の誘引だけではなく、住民の生活環境の改善の手段にならなければならない。このようなプロジェクトを計画し、観光政策を策定するには、市民参加の協働型計画が不可欠である。本研究は、こうした指摘が商店街の活性化に当てはまるかどうかを、実態調査の結果を踏まえて検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は平成25年~27年の3年間で行われる予定である。平成26年度は研究プロジェクトを実施する2年目であり、次の4つの調査・研究を実施するために、助成金の使用額が生じた。アメリカ合衆国サンフランシスコ市で行う(1)対面インタビュー調査と(2)文書資料収集、(3)理論研究と、(4)研究成果発表の4つである。これらの調査・研究を遂行する上で必要な研究設備・図書について、研究代表者の個人研究室にすでに備えている設備と収集済みの図書を除き、理論研究のために必要な協働型計画と都市観光関係図書を購入する経費が必要である。また、アメリカ合衆国サンフランシスコ市での現地調査に加えて、研究の成果を海外の学会で報告するために外国旅費が必要である。さらに、口頭発表の資料、学術雑誌の投稿論文と研究書を作成するために、原稿の校閲費が必要である。 平成26年度と27年度は、設備備品費として、協働型計画、都市観光とサンフランシスコ関連の図書を購入する経費を計上している。また、アメリカ合衆国サンフランシスコ市での現地調査に加えて、研究の成果を国内と海外の学会で報告する予定である。国内学会出席の旅費は、研究代表者が所属する立正大学に支払われるため、本研究では外国旅費のみを計上している。現地調査は、研究代表者が平成26年度に年1回(21泊22日滞在)、平成27年度に年1回(7泊8日滞在)の調査を実施するための外国旅費を計上している。研究発表は平成27年度1回(3泊4日滞在)の外国旅費を計上している。さらに、研究成果として口頭発表の資料、学術雑誌の投稿論文と研究書を作成するために、人件費・謝金として、原稿の校閲費を計上している。
|