2014 Fiscal Year Research-status Report
会計利益と課税所得の一致性が利益の質に与える影響に関する国際比較
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25380589
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
米谷 健司 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90432731)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 会計利益と課税所得の一致性 / 利益の質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、会計利益計算と課税所得計算の制度的連携(Book-Tax Conformity:以下BTC)の程度が、利益の質(earnings management)に与える影響を国際比較することである。平成26年度は実際に国際データを用いた分析を行った。分析対象期間は2003年から2012年までの10年間であり、データはすべてS&P社のCapital IQから入手した。その結果、日本は分析対象46カ国の中でBTCが高い方から12番目に位置しており、会計利益計算と課税所得計算の制度的連携が比較的強いカテゴリーに属することが確認された。また、BTCの水準が高い国は利益平準化を行う傾向にあることが観察され、その観点からはBTCの水準が高い国の方がそれが低い国よりも利益の質が低いと考えられる。しかし、BTCの水準が高い国は、短期的な会計発生高の見積誤差や裁量的会計発生高の水準が低く、これらの観点からはBTCの水準が高い国の方がそれが低い国よりも利益の質が高いと考えられる。このように、BTCの水準が高い制度は利益平準化を助長する傾向にあるものの、会計発生高の見積誤差を小さくし、会計発生高の過大または過小計上を抑制する効果を持つことが明らかとなった。BTCの水準が高い国の会計情報は、それが低い国の会計情報よりもキャッシュ・フローへの実現という観点からは確度の高い数値になっていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度では実際に国際データを用いて分析することを目的としていた。国際比較分析を行って結果を得ることができたため、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の分析結果を基礎としつつ、利益の質の指標間の関係性などに焦点をあてながらさらに分析を行い、研究成果としてまとめる。
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Causes of Carryover |
データ収集及び分析を優先したため、研究会等での成果報告等が少なかった繰越額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加的に必要なデータを入手するために継続してデータベースを契約する。また、研究成果を国内外の研究会等で報告するための旅費として使用する。
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