2014 Fiscal Year Research-status Report
人的資産にかかわる財務的及び非財務的測定に関する理論的・実証的研究
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25380591
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
内山 哲彦 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (50334165)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 会計学 / 管理会計 / インタンジブルズ / 人的資産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、人的資産にかかわる財務的及び非財務的測定に関する理論的研究並びに実証的研究を行うことで、第1に、戦略の実行を頂点とした業績管理を目的として、人的資産の戦略的マネジメントと、管理会計を中心とする業績管理の仕組みとの統合に向けた「統合的業績管理システム」の具体化を図ることを目指している。また、財務会計(外部報告)及び人的資源管理(採用や教育研修)の領域に対する貢献も見据えた、知見の双方向的活用を含めた学際的研究も志向している。 本年度は、昨年度に引き続き、主に統合報告に着目し、理論的研究並びに実証的研究を行った。第一義的には投資家をはじめとする外部のステークホルダーに対する報告を目的とする統合報告が、統合報告書作成の基礎である統合思考により、組織内部におけるマネジメントにも大きな影響を与えるという考えから、特に人的資産に注目して、研究を行った。具体的には、統合報告の経営管理への効果として、主にトップ・マネジメントにおける組織学習の促進、事業活動やマネジメントにおける「サイロ」の打破、人的資産への教育効果を明らかにした。さらに、統合報告の役割をより広い視野から捉えて、企業価値創造に不可欠なコーポレート・ガバナンスと関係づけて、統合報告の役割を体系的に整理した。その結果、企業や企業価値をどのように捉えるかという企業(価値)観によって統合報告並びにその下でのマネジメントに期待されることが異なることを指摘した。また、統合報告の下での管理会計の課題として、外部報告と内部報告との整合化・一体化や、内部情報における整合化・一体化が一層求められることを指摘した。あわせて、人的資産にかかわる情報を含めた、非財務情報どうしの統合化の課題を指摘した。 これらの研究成果は、学会発表1件と論文2件においてすでに明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、人的資産にかかわる財務的及び非財務的測定に関する実態把握と理論的考察を目的とする。その際、「統合的業績管理システム」を念頭に置いた管理会計の研究を中心に、外部報告や人的資源管理にも貢献しうる人的資産の測定について、今日的ニーズに留意した、企業実態の把握と理論・モデルの提示を意図している。 本年度は、主に統合報告に着目して、統合報告の経営管理への有効性、とりわけ人的資産への効果について、理論的並びに実証的に明らかにした。加えて、企業価値創造に不可欠なコーポレート・ガバナンスの枠組みの下で、統合報告とそれにかかわるマネジメントの役割を体系的に整理するとともに、外部報告と内部報告との整合化・一体化や、内部情報における整合化・一体化、非財務情報どうしの統合化といった課題を明らかにした。 また、人的資産の管理に関して、新たに1社のインタビューを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、個別企業に対するインタビュー調査を行い、詳細かつ具体的な実態の把握に努める。特に、人的資産の貢献に関する測定について、企業価値創造に向けて、他のインタンジブルズとのかかわりを含めて、調査の視野を広げたいと考える。その際、研究者による研究グループと、実務家を中心とする研究グループに所属していることから、そこでの研究や参加メンバーからの知見も有機的に活用して研究を推進したいと考えている。 特に、人的資産の戦略実行や企業業績・企業価値向上に対する貢献(つながり)を研究するにあたって、統合報告の考え方や企業実践は大変に有用であると考える。統合報告については、引き続き注目しながら、本研究課題の遂行に役立てていきたいと考えている。
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