2015 Fiscal Year Annual Research Report
「取引コスト」概念を用いた実証的会計研究と規範的会計研究の接合方法の探究
Project/Area Number |
25380592
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大塚 成男 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (20213770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 智大 亜細亜大学, 経営学部, 准教授 (50609021)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 会計学 / 財務会計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Williamsonが提示した「取引コスト」概念を核として、規範的会計研究と実証的会計研究とを接合する方法を検討した。 規範的会計研究において「取引コスト」を主題とする研究を行ううえでは、財務報告をめぐる「外部性」に対する経営者の行動を検討対象とすべきであることが確認された。会計基準の設定は財務報告における「外部性」を内部化することを目的とすべきであり、会計基準の国際化も「ネットワーク外部性」への対応が課題となる。ただし、「外部性」の影響が大きくなり、企業会計における「取引コスト」が増大するのは、企業の経営者が機会主義的な行動を採る場合である。そして、本研究を通じて、「あるべき会計」とは経営者の機会主義的な行動を抑制することができる会計であることが明らかになった。 一方、実証的会計研究においても経営者の現実の行動の洗い出しが可能であることを立証することができた。従来の実証的会計研究は株価データを基礎とする被説明変数を用いることで投資家の行動を明らかにする研究が多かったが、経営者による予測データ等を用いることによって、経営者の行動変化を明らかにする実証的研究を行うことができる。本研究においても、現実の予測利益や包括利益等のデータを用いて、経営者の行動変化を明らかにすることができた。 したがって、企業会計上の変化に伴う経営者の行動変化を研究主題とすることで、規範的会計研究と実証的会計研究を接合することができる。規範的研究によって会計基準の変化と経営者の行動変化をモデル化し、両者の因果関係を明確にするとともに、実証的研究によって経営者の行動変化が現実に生じていることを立証することで、規範的なアプローチと実証的なアプローチを両立させて企業会計の現状を評価し、将来に向けた方向性を論じることができるとの結論が得られた。
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Research Products
(4 results)